ユーザー企業内でPMOを立ち上げても、単なる管理屋に陥り、現場から煙たがられるだけというケースが多いようです。それを防ぐには、基本的な部分を正す必要があります。まず、情報を吸い上げる人的ネットワークを作り、課題をスムーズにエスカレーションさせます。当たり前のように思われますが、それができていないから管理屋に陥るのです。
PMOには、非常にたくさんの役割を期待されるのが常です。PMOに関する調査結果から浮かび上がってきたPMOの役割の一部として、下記のようなものが挙げられています。
役割がこれほど多岐にわたってしまうと、PMOの要員配置や人数も分からなくなってしまいます。PMOを組織化したとしても、必要十分な人数を常時抱えておくことはできません。必要最低限の人数で、どのように効果を発揮していくかが重要な点です。
以下、PMOを推進していくに当たって、ぶつかりやすい壁に対するポイントを2つ述べてみます。
ユーザー企業にとって必要なPMOの第1条件は何でしょうか。ほとんどの場合、全てのプロジェクトの状況を把握することだと思います。プロジェクトの状況把握のために、プロジェクト管理標準を導入・定着させ、プロジェクト報告会議の定例化やプロジェクトマネジャーのトレーニング、プロジェクト管理ツールの導入・定着化といった取り組みが行われています。
しかし、管理帳票はたくさんできているのに、有益な情報が得られていないのが実情です。結果的に、管理を徹底させようと現場に多くの管理負荷を与えてしまうことも、管理プロセスを形骸化させてしまう要因の1つです。
それを防ぐためには、「人的な管理情報ネットワーク」を構築する必要があります。PMOは、公式・非公式な情報収集のルートを必ず握っておかなければなりません。また、「報告・連絡・相談(ほうれんそう)」の習慣を、PMOおよびプロジェクトマネジャー自身がしっかりと身に付けるべきです。これが情報を吸い上げる組織構造の基礎になります。
情報を吸い上げる組織構造ができたとしても、ただ漫然とプロジェクトの問題を話し合っているだけでは何の解決にもなりません。PMOはステークホルダーマネジメントに貢献すべきであり、プロジェクトマネジャーが解決できない課題に対して、社内のどこにどのように情報をエスカレーションすべきか、PMOはアドバイスするだけでなく、一緒に動いて課題をエスカレーションするための努力が必要です。