音楽や演劇等のチケット販売、イベントの企画運営、メディア運営等を事業として展開されているぴあ株式会社様。DXを推進する同社では現在、複数のシステム開発プロジェクトが走っています。そうした中、リソース調整やリスクの洗い出しといったプロジェクトマネジメントの必要性を感じたことから、同社が導入したのがMSOLのプログラムマネジメントオフィス(PgMO)※でした。
※同時並行で進められている相互に関連するプロジェクト群に対し、プロジェクト間の優先度決め、リソースの最適化など、全体最適を考えた上でプロジェクトを統括マネジメントすること。部門PMOが行う組織内のプロジェクト状況可視化ではなく、複数プロジェクト群を統括して明確に1プログラムとして扱うケースが対象となる。
小宮:2021年から当社のPgMOをご導入いただきました。導入に至った背景を教えてください。
山田:当時、ぴあの中で次世代システムの開発プロジェクトが始まっており、その中で複数の開発プロジェクトが並行して走っていました。
開発初期では、各プロジェクトのPMが開発における課題の洗い出しなどを行います。しかし、ぴあのメンバー内におけるプロジェクトマネジメントやプログラムマネジメントに関する知見は十分とは言えず以前から課題視していました。
具体的には、マスタースケジュールが統合的に見えていないとか、各プロジェクトにおけるリスクが抽出できないとか、複数のプロジェクト間におけるリソース調整がうまくいかないなどの問題がありました。実際の開発は外部のベンダーにお願いしているのですが、マルチベンダーとなる場合もありますし、事業部門との調整などを含めた全体的なマネジメントはシステムソリューションリージョンで行うことになります。ですから、開発プロジェクトを円滑に進行するためのスキルは不可欠なのです。
そこで、開発プロジェクトに関する知見を持った外部のパートナー企業に、プログラムマネジメントをお願いしたいと考えました。同時に私たちとしても、プログラムマネジメントのやり方を学びたいという想いもありました。
小宮:数あるコンサルティング会社やSI会社の中で、MSOLに依頼いただいた理由を教えてください。
山田:PgMO(プログラムマネジメントオフィス)という概念自体は以前から知っており、導入したいと思っていました。ただ、どんな会社がPgMOを提供しているのかについては知識がなかったので、最初はネットで検索するなどして調べました。
その中で見つかった企業を比較検討した結果、MSOLにお願いすることにしました。理由としては、まずMSOLが上場企業であり信頼できると感じたこと、そしてPgMOやPMOに特化したサービスだったことです。総合的なコンサルではなく、ピンポイントでPgMOをお願いしたいという当社の要望に合ったのがMSOLでした。また、サービスのコスト感もよかったです。
小宮:導入する上で何か懸念点はありましたか。
山田:これはMSOLに限った話ではないのですが、コンサルティングは「誰が担当してくれるのか」という人依存の部分がかなり大きいと思っています。MSOLの営業の方と話したときは良い感触を得られましたが、実際にアサインされる方の力量がどれくらいなのかについては少し心配していました。
ですが、その懸念は小宮さんにお会いして払拭されました。というのも、小宮さんの勘所が良く、話していてストレスを感じなかったのです。コンサルタントによっては、こちらの言っている内容がなかなか理解してもらえずもどかしくなることも多いです。その点、小宮さんは本格的にPgMOが始まる前の打ち合わせ段階から理解が深く、スムーズに検討を進められました。これは期待以上だなと思いました。
小宮:山田さんにご提案したのが2021年の9月で、10月からPgMOを本格的に導入いただきました。導入後は課題とおっしゃっていた次世代システムプロジェクトのマスタースケジュールを横断的に管理できる体制を整えました。
田口:PgMO立上げのタイミングで私も参画し、当社の知見を生かして潜在的なリスクや課題を抽出するなどご支援させていただきました。
山田:実際のところ、これまでは気づいていなかった潜在的リスクが大量に出てきましたよね。
田口:そうですね。100個くらいは出たと思います。可視化したことで、そのリスクを事前に潰すことができました。
小宮:MSOLのPgMOをご導入いただいた効果はどのように感じていらっしゃいますか。
山田:まず、プロジェクト全体を横断的に見られるようになり、潜在的なリスクの可視化ができたこと。さらに継続的にプログラムマネジメントを行ったことで、当社のメンバーの中に「プログラムマネジメントは重要だ」という意識が醸成されたことも大きな効果だと感じています。
また、MSOLと一緒にプログラムマネジメントを進めることで、「どんなところに着目してマネジメントすればいいのか」といったやり方を理解し、フォーマットをつくれたのも大きかったです。まだまだ十分とはいえませんが、プログラムマネジメントのベーシックな部分については当社のメンバーも自主的に実行できるようになってきています。これらの成果は期待以上であり、コスト以上のリターンがありました。
小宮:MSOLの具体的なコンサルティング内容についてはいかがでしたか。
山田:驚いたのは、コンサルタントの方が想像以上に柔軟な対応をしてくださったことです。もともと領域を狭めずお願いしていたこともありましたが、それにしても相談してみると「あれもこれも」とご対応いただいて。一般的なコンサルティング会社にお願いするとかなりの金額になると思いますが、MSOLはその点も融通を利かせてくださいました。
田口:他社さんは領域を絞ってそれ以外は別料金ということが多いのですが、当社はお客様のミッションを達成することが第一だと考えているので、そのためには何でもやるという姿勢をとっております。そこに価値を感じていただけたのは嬉しいですね。
山田:MSOLのその柔軟さは、お願いする側からしても大きなメリットですよね。工数にしてもそうです。ちょっとした作業でも1人月となるとけっこうな金額になりますが、MSOLの場合は0.1人月みたいに細かく刻んで対応していただけます。高度な知見を低コストで調達できるのはかなりの魅力だと思いました。
小宮:コストを抑えようとすると、通常のコンサルであれば経験の浅い若手のメンバーをそろえがちです。ただ、それではお客様が期待される成果を出せないこともあります。当社では今回のようにコンサルタントの参画工数を細かく切り売りすることができるサービスもご用意しているため、品質を担保しながらコストを下げることが可能でした。
田口:私は当初のPgMO業務は一旦終了し、現在は個別のプロジェクトのご支援を行っている状態です。
山田:今回PgMOで一定の成果が出て、当社の中でプログラムマネジメントのフォーマットをつくることができました。今後もこのやり方を継続していかなければならないと考えています。今回のプロジェクトに関わったメンバーだけでなく、次の世代のメンバーにも継承していくことが必要です。そのためにも、MSOLには今後も期待しています。
小宮:社内の皆さんからも評価をいただけたのは嬉しく思っています。
山田:小宮さんと田口さんに支援していただいたことで、弊社のメンバーはもう「MSOLがいないと業務が回らない」とまで言っていますよ(笑)。2年間一緒に伴走いただいたことで、MSOLのことは単なるコンサルというよりも“仲間”と呼ぶべき存在に感じています。
小宮:今後MSOLに期待することはありますか。
山田:おかげさまで自社でもプログラムマネジメントはある程度自走できるようになってきました。とはいえ、引き続きMSOLにはプログラムマネジメントをお願いしたいと思っています。それだけでなく、当社のメンバーの成長をご支援いただくことにも期待しています。教育プログラムをお願いしているわけではありませんが、MSOLがお手本を見せてくれることで、メンバーの成長にもつながるからです。
小宮:MSOLのサービスはどんな企業に適していると感じますか。
山田:プログラムマネジメントはどの企業でもニーズがあると思います。少なくともシステム開発プロジェクトがあるなら、必ず発生する課題だからです。企業によっては自分たちの業界の知見を持っていないことを不安に思うかもしれませんが、MSOLのように優秀なコンサルタントであれば業界知識はあとから十分キャッチアップしていただけます。そこは心配する必要はないでしょう。
小宮:今回、ぴあ様の次世代システムプロジェクトを支援させていただきましたが、今後の展望についてもお聞きしたいです。
山田:コロナ禍を経て、当社のサービスはより一層デジタルにシフトしています。その中で、会社としてもデジタルサービスの土台となるシステム基盤には注目していますし、それを支えるシステムソリューションリージョンのメンバーへの期待値も高まっています。
今後は内製化を進めたいという展望もあり、より高度で広い知見を持ったメンバーが必要になっていくでしょう。エンジニアはもちろんですが、それ以外のDX人材もどんどん採用していきたいと考えています。
小宮:実際に支援させていただいて感じましたが、ぴあさんはフットワークの軽い会社ですよね。
山田:自由にいろいろなことに挑戦できる環境だとは思いますね。システム開発でも現場の裁量が大きいので、チャレンジ精神のある人にとっては働きやすい会社だと思いますよ。
エンターテインメント領域は今後、ますますデジタルシフトしていくでしょう。そうした時代の変化に合わせて、当社もDXを進めていきます。
( 撮影/尾関裕治 取材・文・編集/福井寿和、山田井ユウキ )