プロジェクトマネジメントのヒント

プロジェクトを失敗させないヒント53『計画変更時の見極めを支援する』

作成者: MSOL|Nov 14, 2024 9:19:33 AM

 

プロジェクト開始当初に計画していた作業内容よりも多くの作業が発生してしまうことは、頻繁に起こります。PMOはその調整作業に一役買う必要がありますが、どんな検討や準備をすべきでしょうか。追加作業が発生した時の計画変更作業から、最終的な意思決定までのプロセスを概観してみましょう。

プロジェクトの作業計画を立てるなかで、各チームの担当作業をまず決めますが、その時点で全ての作業を洗い出すことができない場合がよくあります。開発方法論にのっとったシステム開発プロジェクトであったとしても、予想外の出来事が発生し、その対応に追われることもあります。

例えば、プロジェクトの途中でユーザー企業側の担当役員が異動になった場合、プロジェクトの中止までいかなくても、プロジェクトが縮小されたり、プロジェクトスコープが変更されたりします。プロジェクトへの影響が極めて大きいケースもあるでしょう。

困るのは、こうした変更が起こったにもかかわらず、「プロジェクトの予算や納期はそのまま」というケースがよくあることです。新しい役員からの評価を気にするあまり、“ガンバリズム”で決断してしまうプロジェクトマネジャーもいるのではないでしょうか。当初予期していなかった作業が発生した時に、PMOはどのような役割を担うべきかについて述べたいと思います。

想定外が生じた時、マネジメント力が問われる

当初決められた役割や作業以上の仕事が出てきた場合、気持ちのうえでは敬遠したいと思うものです。結果的に、責任感の強いメンバーが無理をすることで対応するケースが多いのではないでしょうか。ただ、このメンバーが病気や過労で休んでしまうと、プロジェクトがピンチを迎えるかもしれません。

一方で、追加作業が発生するたびに、メンバーが一丸となって取り組むプロジェクトもあります。その姿には一生懸命さが表れていて、一見チームワークに優れた、順調なプロジェクトに見えます。しかし、盲点もあります。

プロジェクトメンバーが20人を超えるような場合、必要のないメンバーまで会議に招集されたり、あまり意味のない作業を任されたりして、本来やるべき作業になかなか手が付けられなくなるのです。これは想定外の問題から派生した「2次災害」とでも言うべきものでしょう。

組織に一体感を持たせたいという気持ちもあるかと思いますが、追加作業に対応する時も、役割分担を明確にすることはやはり、プロジェクトマネジメントの王道です。追加作業の役割分担を行うためには、作業計画に基づいたWBSおよびアウトプットとしての成果物をまず定義する必要があります。そもそもWBSの作成で壁にぶつかる場合もありますが、プロジェクトのアウトプットから論理的に考えていけば、うまくいきます。

それらのアウトプットに対して責任を持つチームおよびメンバーをそろえ、必要工数を見積もると、適正な役割分担が見えてきます。ここでの役割分担は成果物作成のための実行責任を持つという意味に限定し、説明責任という役割は除外しておきましょう。

追加作業に関する計画フェーズでここまできちんと整理できていれば言うことなしですが、現実にはなかなかそこまではできません。プロジェクトを進めながら調整していくことも多いかと思います。仮に100%完璧な計画を作成していたとしても、想定外の出来事が再び起こるかもしれず、さらなる変更を余儀なくされる可能性もあります。プロジェクトは不確実性の塊です。

少々乱暴な言い方かもしれませんが、「計画は変更するために作られる」と考えた方がよいでしょう。そう思っていれば、いざという時、ぐずぐずせずに済みます。プロジェクトの状況により異なるため、一概に言えませんが、計画変更で追加作業が発生した時、「現状のプロジェクト体制でどこまで踏ん張れるか」を見極めることが、意思決定支援に一番必要なことだと思います。