プロジェクトマネジメントのヒント

プロジェクトを失敗させないヒント27『プロマネに逆らっても「助けて」と叫べ』

作成者: MSOL|Jan 19, 2024 1:05:00 PM

PMOに対する直接の指揮・命令権限はプロジェクトマネジャーにあります。とはいえ、PMOはプロジェクトマネジャーに絶対服従してしまってもよいのでしょうか。時にプロジェクトマネジャーが機能不全に陥ることだって、あります。そんな時、プロジェクトマネジャーをいさめ、プロジェクトマネジャーに逆らってでも上位組織に「助けてくれ!」と直訴できるのはPMOしかいないのです。

体制図から考えると、PMOはプロジェクトマネジャーの方針に従うべき組織です。普段、プロジェクトに何か問題が発生した場合は、プロジェクトマネジャーはPMOと共に色々な対策を実施します。対策に実現性があり、根本的な原因に対処できているうちは、これでいいでしょう。

しかし、プロジェクトが危なくなると、次々に表れる問題にその都度対応するといった"モグラたたき"状態になります。そして、モグラ(問題)の数が増えると、プロジェクトをゴールに導くことよりも、モグラをたたくことに目を奪われがちです。さらにモグラが増えて、プロジェクトマネジャーもPMOも制御不能に陥ると、プロジェクトの危機が一気に表面化します。

PMOはプロジェクトマネジャーの命令だからといって、いつまでもモグラたたきをしていてよいのでしょうか。問題や課題を制御できなかったことは、PMOにも責任の一端があります。半面、PMOはプロジェクトとプロジェクトマネジャーの状況を、冷静な目で判断しなければなりません。

みなさんも経験があると思いますが、立場や役職が上がれば上がるほど、他の人に助けを求めにくくなります。プロジェクトマネジャーともなれば、経験もそれなりに積んできて、プライドもあります。ましてや、自分の評価にも関わってくるので、プロジェクトマネジャーから「助けて」とはなかなか言い出せません。やっと助けてくれと言った頃には、時すでに遅し。悲惨な状況になっているケースも多いでしょう。

PMOはプロジェクトマネジャーをサポートする組織ではありますが、プロジェクトが危機に陥ったら、プロジェクトマネジャーに代わって「助けて」と大声で叫ぶ勇気が必要です。プロジェクトマネジャーの立場から見ると、PMOに裏切られたように見えるかもしれません。しかし、この勇気は後にプロジェクトマネジャーだけでなく、関係者全員を助けることになるのです。

プロジェクトマネジャーの暴走を食い止める

それではPMOとして、プロジェクトマネジャーの危険信号をどのように見極めればよいでしょうか。次のような兆候が当てはまるなら要注意です。

  • メンバーがプロジェクトマネジャーの指示に納得していない
  • 指揮系統を無視し、末端の担当者にプロジェクトマネジャーが指示
  • 顧客との関係が悪化している
  • メンバーからプロジェクトマネジャーへの不平不満や悪口が噴出
  • 協力会社に対して無理難題を押し付けている
  • プロジェクトマネジャーが何をしているか、誰も分かっていない
  • プロジェクトマネジャー1人だけが何日も深夜残業や徹夜をしている

これらは、プロジェクトマネジャーが何とかプロジェクトを回復させようとして対策を打つものの、周りが見えなくなっていることを示す兆候です。前述したように、プロジェクトマネジャーの内面的な問題により、視野が狭くなってしまうと起こります。放置すれば、メンバーのモチベーションの低下やプロジェクトの混乱を招くことは、容易に想像できると思います。

一方で、プロジェクトの予算超過や品質悪化、スケジュール遅延についても、悪い兆候として見極めるべきだという意見もあるでしょう。当然、これらの事実にも常に目を向けて、随時対策を実施していかなければなりません。ただし、それらはプロジェクトが傾いた「結果」の状態です。これらの問題が起こる前に手を打てるなら、それに越したことはありません。早期に手を打つには、プロジェクトマネジャーの危険信号を見逃さないことです。

緊急時のホットラインがプロジェクトを救う

プロジェクトマネジャーをサポートする組織としては、プロジェクトマネジャーの上位管理者である「プロジェクト責任者」や「プロジェクト管理室」などと呼ばれる横断的な組織(プログラム・マネジメント・オフィス)を設置している会社もあるでしょう。

ここで質問します。もし、プロジェクトマネジャーが機能不全に陥ったら、PMOであるあなたは何をすべきでしょうか。

答えはお分かりですね。PMOの役割は、プロジェクトマネジャーに代わって、迅速に上位サポート組織へ助けを求めることです。そのためには、普段から、上位サポート組織へのホットラインを確保しておくことが重要になります。ただし間違ってもプロジェクトマネジャーの代わりに、PMOだけで何とかしてやろうなどとは考えないようにしてください。