プロジェクトマネジメントのヒント

PMとPMOの立場・役割の違いとは|PMOの必要性・求められるスキルの違いなど

作成者: MSOL|Jul 16, 2024 8:36:47 AM

本記事の読みどころ

DXやAI活用等、プロジェクト難易度の上昇や関係者の複雑化等により、PMの負担は高まっています。そんな中、PMOの配置・活用することでプロジェクトの円滑な推進を実現している企業が増えています。

ただ、PMOとはどういう役割なのか?PMとPMOの違いは?等、「PMO」という言葉に馴染みがない方も多いのではないでしょうか。この記事では、PMとPMOの立場や役割の違い、PMOの必要性や求められるスキル、PMOの種類や運用体制、PMO導入時の注意点などを解説します。

PMとPMOの立場・役割の違い

プロジェクトで目指すゴールはPMもPMOも同じです。しかし、両者は立場・役割が異なります。以下でその違いを解説します。

プロジェクトを統括するPM
PMは「Project Manager(プロジェクトマネージャ)」の略で、プロジェクトのヒト・モノ・カネや運営方針に関する意思決定を行い、プロジェクトを統括する役割です。プロジェクト計画に基づき、プロジェクトを推進します。プロジェクトを成功に導くため、リーダーシップが求められます。そんなPMの仕事の中で最も重要なのが、スピーディーかつ正確な意思決定です。

PMを支援するPMO

PMOは「Project Management Office(プロジェクトマネジメントオフィス)」の略で、プロジェクト全体の管理・状況の可視化や分析・改善提言・問題解決支援・間接業務支援・関係部署間のすり合わせなど、多岐にわたります。プロジェジェクトメンバーが最高のパフォーマンスを発揮できる環境を整えるとともに、PMが本来の業務である意思決定に集中できる体制を整えるのがPMOの役割です。

PMOを配置する目的・必要性

プロジェクトを行う際、なぜPMOを配置する必要があるのでしょうか。PMOを配置する目的と必要性を解説します。

PMが意思決定に集中できるようにする
PMがプロジェクトマネジメントに集中できるようにするため、PMOの配置は重要です。PMOは、状況可視化や分析・改善提言・問題解決支援・ファシリテーション・間接業務支援等を担当します。これによりPMは、本業である意思決定に注力可能となります。

プロジェクトの成功確率を向上させる
ビジネス環境の変化に対応しつつ企業が成長するには、経営戦略に基づく多くのプロジェクトを成功させる必要があります。しかし、日本やアメリカでは「プロジェクト成功確率は50%」という統計結果が出ており、プロジェクトの成功は容易ではありません。

今後もプロジェクト成功確率の向上は大きな経営課題の一つと言えるでしょう。プロジェクトへPMOを配置する事により、状況の可視化による現状把握・問題発生時の正確且つ迅速な意思決定が容易になります。結果として、プロジェクト成功確率が高まり、経営戦略の実現確率が向上します。

※参考:プロジェクト失敗の理由、15年前から変わらず|日経ビジネス


PMOの4つの種類

MSOLではPMOの種類を、4つの「型」として定義しています。それぞれの型について、特徴を解説します。

参謀型PMO:プロジェクトマネジメントコンサルタント
参謀型PMO:プロジェクトマネジメントコンサルタント(PMC)は、PMの参謀としてプロジェクト全体を俯瞰し、リードしていくポジションです。

PMのブレインとして、

・プロジェクトマネージャーの参謀として将来を見越した計画・準備
・経営層向けレポート/意思決定支援
・コンサルティング/組織間調整
・PMO組織のリーディング

などを行います。関係者から相談されやすい人間性や懐の深さ、インテグリティなどのスキルが必要です。

推進型PMO:プロジェクトマネジメントアナリスト
ブ推進型PMO:プロジェクトマネジメントアナリスト(PMA)は、PMへの提案やアドバイスを行う、ヘッドクォーター的役割を担うポジションです。               

・プロジェクト計画の推進や分析
・チーム間やグループ間の調整や問題解決
・プロジェクトリーダーの相談役

PMへのアドバイスや提案を行う能力、相手になかなか言いにくいことを伝えられるコミュニケーション能力などのスキルも必要です。

管理定着型PMO:プロジェクトコントローラー
管理定着型PMO:プロジェクトコントローラー(PJC)は、プロジェクト状況を的確に把握し、リーダーが意思決定にあたって必要な情報を、迅速に得られる環境を作るポジションです。組織とプロジェクトが常に正しく見えている状態を保つために、、以下の業務に携わります。

・プロジェクト管理ルール・プロセス策定
・プロジェクト管理の導入・定着・改善
・各種会議のファシリテーション
・報告書作成

他者に情報提供を依頼するケースが多いため、主にコミュニケーションスキルや積極的な姿勢が求められます

事務局型PMO:プロジェクトアドミニストレーター
事務局型PMO:プロジェクトアドミニストレーター(PJA)は、プロジェクトに関連して発生する、さまざまな管理業務や庶務的な作業を担当するポジションです。

・会議調整、会議準備
・各種ドキュメント管理(マスタースケジュールや体制図の更新、ファイリング等)
・PC等の働く環境の整備
・リーダー層からの雑多な作業依頼対応

人と人とをつなぐ業務が多いため、プロジェクト全体の状況を把握した上で、臨機応変に対応できるスキルが必要です。。

PMOの3つの運用体制

PMOは支援範囲により主に3つの運用体制に大別されます。代表的な特徴をそれぞれ解説します。

個別プロジェクト型:PMO
個別プロジェクト型は、プロジェクトごとにPMOがつく運用体制です。PMを中心に、プロジェクト全体を支援し、プロジェクトの目的/成果の合意形成、プロジェクト計画の策定、プロジェクトの状況の見える化、意思決定支援など、様々な問題解決を支援します。

プロジェクト横断型:PgMO
プロジェクト横断型は、複数のプロジェクトを横断的に管理するPMO運用体制です。この役割は「Program Management Office(プログラムマネジメントオフィス)」と言います。プロジェクトの個別最適を考えるのではなく、プロジェクト間の整合性の確認、リソースの最適化などの全体最適を適切に実施するプログラム管理を担当します。

組織変革マネジメント型:EPMO/部門PMO型
組織変革マネジメント型は、全社および部門レベルでの変革を推進するPMO運用体制です。全社レベルを「EPMO(Enterprise Project Management Office)」、部門レベルを「部門PMO」と言います。EPMO/部門PMOは、全社/部門といった組織レベルの課題に対し、課題解決推進だけではなく、予防医療的なアプローチで組織を変革していきます。

PMO導入時の注意点

PMO導入には、いくつか注意すべき点があります。ここでは、代表的な注意点を解説します。

PMとPMOが対立することがある
PMOは、現場の状況把握に務め、中立的な立場で助言するため、PMと対立する可能性があります。PMOの態度が高圧的になってしまうとPMとPMOの協力体制が失われ、プロジェクト成功の阻害要因となります。互いの役割と責任を理解し、相手を尊重した上でコミュニケーションを積極的にとり、正しいことを議論し合える関係性を築きながら、協働していくことが重要です。

指示系統が複雑になり現場が混乱することがある
PMとPMOの両方から現場へ依頼をすると、どちらの指示に従うべきかわからなくなり、現場が混乱することがあります。また、PMOの主導権が強くなりすぎると、PMのリーダーシップが弱まり、チームに混乱を招きかねません。指示系統については、事前にPMとPMOでルールを定義し、プロジェクト全体に周知した上で、ルールに基づいた指示を行うようにしましょう。また、PMOから現場へ指示する場合は「PMからの指示を受けて連絡しています」等、依頼元を明確にした上で連絡することとオススメします。

PMOへの理解が低く、うまく機能しないことがある
プロジェクトのメンバーがPMOの業務を理解していないと、「管理とトラッキングばかりで、現場業務を増やす役割がPMO」と誤認され、メンバーが非協力的になってしまい、PMOがうまく機能しないことがあります。PMはPMOの目的や役割を明確にしプロジェクトメンバーに周知する事、PMO自身も自分の役割をチーム全体にアピールしていく事で、PMOがうまく機能し、プロジェクトに恩恵をもたらす可能性が高まります。

PM・PMOに適したスキル・資質とは

PMやPMOには、どのようなスキルや資質が求められるのでしょうか。ここではPM・PMOに適したスキル・資質を解説します。

PMに求められるスキル・資質
前提としてPMは、プロジェクトマネジメントの専門知識・経験を持つことが望ましいです。また、顧客や委託先との契約締結(調達マネジメント)を行う場面もあるため、法務知識を用いる機会も多くあります。専門的な技術や知識と共に、人間として成熟していく姿勢も重要です。
倫理観や真摯な姿勢に加え、現場をまとめるリーダーシップがあり、ゴールを常に見据えて行動できる人材がPMに適していると言えます。

PMOに求められるスキル・資質

PMOに求められるスキルは、基本的にPMと同じです。加えて、PMを支援するために、以下のスキルも必要になります。

・状況を可視化するドキュメンテーションスキル
・情報を分析し課題を特定するスキル
・課題に対する改善策を提言する提案スキル
・提言した課題解決策を推進する実行力
・会議やディスカッションを円滑に推進するファシリテーションスキル
・PMと同等以上にプロジェクトを俯瞰的に見て状況を判断する能力
・プロジェクト関係者間のハブになるコミュニケーションスキル

PM・PMOが取得したほうがよい資格

PMやPMOは、資格取得は必須ではありません。しかし、資格取得によってプロジェクトマネジメントに役立つ知識やスキル獲得できます。

代表的なPMの資格
PM関連で代表的な資格は「PMP」と「プロジェクトマネージャ試験」です。

代表的なPMの種類

PMP

プロジェクトマネージャ

資格の特徴

米国PMIが認定する資格

日本の国家資格
IPA(情報処理推進機構)の
高度情報処理技術者試験の一つ

取得のメリット

・スキルの証明
・キャリアアップ
・人的ネットワークの拡大

・スキルの証明
・キャリアアップ


参考:PMP®資格について | 一般社団法人 PMI日本支部
参考:プロジェクトマネージャ試験|IPA 独立行政法人 情報処理推進機構

これらはPMスキル保有に関する客観的な証明になります。なお、PMPは海外でも認知度が高いですが、IPAの「プロジェクトマネージャ」は日本独自資格のため、海外では認知度が低い点に注意してください。

。また、経済産業省が「アジャイル・ガバナンス」で提唱した通り、昨今はアジャイル開発も増えてきました。今後を見据えた資格取得を検討する場合、アジャイル系の「認定スクラムマスター」の取得もおすすめです。
     
参考:アジャイル・ガバナンスの概要と現状|経済産業省

代表的なPMOの資格
PMO関連で代表的な資格は下表の通りです。

代表的なPMOの資格

PMOスペシャリスト

プロジェクトマネジメント
・アソシエイト

資格の特徴

・PMO業務で習得すべき知識を証明する資格
・日本ローカルの資格

PMOの基本的な知識や技術を証明できる資格

取得のメリット

上位資格のダブルスター取得で、自社のブランディング向上、組織力の強化が目指せる

ビジネス力の向上やキャリアアップに役立つ

参考:PMOスペシャリスト™認定資格シリーズ|日本PMO協会
参考:プロジェクトマネジメント・アソシエイト認定資格|日本PMO協会

また、アジャイル系の資格としては以下が挙げられます。

・アドバンスド認定スクラムマスター(認定スクラムマスターの上位資格)
・認定スクラムプロフェッショナル スクラムマスター


まとめ

プロジェクトを成功に導くには、PMとPMOのそれぞれの立場・役割を理解し、PMが意思決定に集中できる環境を維持し続ける事が大切です。プロジェクト推進にあたり、「PMが多忙過ぎる、プロジェクトの状況が見えない、プロジェクトマネジメントがうまく機能していない等により、迅速な意思決定ができていない」「複数プロジェクトを横串で把握したいが、思うように管理できていない」「正確且つタイムリーな報告が現場から上がってこない」など、このような悩みを抱える企業担当者様がいらっしゃいましたら、ぜひMSOL(エムソル)にご相談ください。

MSOLは、プロジェクトマネジメントの実行支援を強みとする企業です。取引社数150社以上(多数の上場企業、グループ企業含む)、500以上のプロジェクト支援実績があります。PMやPMOの立場・役割に課題を感じている企業担当者様は、下記よりお問い合わせください。

お問い合わせはこちら

(会社名:株式会社マネジメントソリューションズ  略称:MSOL エムソル 監修者名:福井寿和)