大規模プロジェクトの停滞原因を可視化し、方針策定を支援 - 現場メンバーの育成にも貢献

※掲載情報は取材当時のもの

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ANAシステムズ株式会社

  • 売上 443億円(ANAシステムズ単体)、2.05兆円(ANAホールディングス連結) (2024年度決算)
  • 従業員数 958名(24年4月1日時点)
  • 課題 オフショアを活用したシステム開発プロジェクトのマネジメント、プロジェクトマネジメント人財の育成
  • 支援サービス PMO支援
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支援先企業ご担当者様

支援先企業ご担当者様

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データマネジメント部 部長
山口武志 様

MSOL担当者

MSOL担当者

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第二PM事業本部 

デリバリーマネージャ
松島申浩

プロジェクト情報

プロジェクト情報

  • プロジェクト名:国内線/国際線旅客システム統合における、旅客実績データウェアハウスのマイグレーションプロジェクト
  • フェーズ:設計~開発~テスト~導入フェーズ
MSOL支援概要(目次)

    導入の背景

    オフショアのマネジメントとコミュニケーション課題でプロジェクトが停滞

    ANAコミュニケーションズと全日空システム企画の合併により設立されたANAシステムズは、昨年度設立10周年を迎え、ANAグループのIT会社として同グループのDX推進を担っています。そんな同社が現在注力するのが、ANAにおける国内線旅客サービスと国際線旅客サービスのシステム統合プロジェクトです。同社のデータマネジメント部では、「データドリブン経営」を実現するために、データレイク・データウェアハウス等の開発・保守運用とビジネスデータのマネジメントを通じてANAグループ全体のデータ利活用を推進しています。データマネジメント部を率いる山口武志部長に、MSOLのサービスを導入したきっかけや導入の効果についてお聞きしました。

    松島:まず、プロジェクトの詳細について教えてください。

    山口:ANAでは現在、国内線旅客サービスと国際線旅客サービスにおけるシステム統合プロジェクトを進めています。プロジェクト全体では相当な規模になりますが、その中でMSOLにご支援いただいているのはデータの蓄積・分析プラットフォームを新しい旅客システムに適応させるプロジェクト(後述の「内際統合実績系プロジェクト」)です。私たちのビジネスの中心となる予約履歴、搭乗履歴といった旅客系実績データを収集し、整理・分析して次のビジネスインサイトを作るためのデータ利活用。そのためのデータマネジメントシステムをマイグレーションするサブプロジェクトとなります。

    松島:かなりの規模と期間にわたる一大プロジェクトですよね。

    yamaguchi002

    山口:2021年下期から始まって2026年の完了を計画していますから、5年以上にわたるプロジェクトです。まずは2025年度に一部サービスの統合が完了し、スタートする予定です。規模感としては前述の実績系プロジェクトだけでも2,000人月程度になります。

    松島:MSOLが支援を開始したのは2022年の6月となります。プロジェクト自体は2021年から始まっていたとのことですが、どういった課題感があったのでしょうか。

    山口:私たちが従来から使用していたデータウェアハウスシステムでは、以下のような課題を抱えていました。長い年月改修を積み重ね、利用されてきたデータウェアハウスであるがゆえに、機能が肥大化して、機能間の連携が複雑化。初期に構築された機能においては設計書を紛失したり、知見のある担当者が離職していたりと、ごく少数の全体像を把握しているデータアーキテクト人財に、維持を依存する状況となってしまっていました。その結果、小規模のデータ改修でも、全体の影響調査に時間を要し、アジリティとコストの課題が大きく露呈してきていました。

    内際統合実績系プロジェクトの難易度を上げたのは、先述の課題を解決するために、旧データウェアハウスから新データプラットフォーム「BlueLake」への移行も、国内・国際旅客データの統合と同時に行わなくてはならなかったこと。ANAグループでは、データ民主化の方針を経営指針にあげています。ANAグループの社員がデータを簡単に利活用できるようにするため、新データプラットフォームの構築が並行して実施されていました。本プロジェクトでは、もともと国内線と国際線で大きくデータ構造が違うものを、開発中の新データプラットフォームのアーキテクチャにあわせて統合しつつ、従来から行っていた分析機能も維持する必要があります。

    そこで、最初の難関に直面したのが、分析計画や概要設計フェーズで、新データプラットフォーム上でのアーキテクチャベースラインがなかなか確定できなかったこと。コロナ禍のプロジェクト推進ということで、担当者同士のコミュニケーションも十分にとれず、認識齟齬が多々発生し、都度設計をアップデートするといった事態が発生しました。また、設計書が無い機能、有識者が不在な機能が多々存在することで、その都度機能をリバースエンジニアリングによって可視化するなど、多くの労力と手戻りが設計段階の初期から発生しました。

    また、私たちは今回の旅客サービス統合によって大規模にデータ構造が変わることをきっかけに、新プラットフォームとデータアーキテクチャへ機能を刷新することが、これらの課題を抜本的に解決するチャンスでもあると捉え、積極的なチャレンジを決断しました。ただし、それを実現するためには、多大な開発コストが必要となる見込みでした。そこでプロジェクトコストを抑制する方策として、オフショアを活用することにしましたが、開発フェーズに入ってからは、オフショアのマネジメントに課題が発生しました。

    松島:そこでMSOLにご相談いただいたわけですね。プロジェクトマネジメントについてMSOLのような外部企業の力を借りようと考えたのはなぜでしょうか。

    山口:データマネジメント部では、データエンジニアリングとデータデザイン、そしてデータサイエンスという3つの領域に集中して人財育成を進めてきました。そのため、2,000人月という大規模なプロジェクトをマネジメントできるだけの経験とスキルを持った人財が部内にいませんでした。もちろん、社内を広く見ればそうしたプロジェクトマネジメントスキルを持った社員もいますが、そういった社員は国内/国際線システム統合のメインプロジェクトですでに役割をもっていたため、サブプロジェクトである実績系プロジェクトに十分なリソースが確保できませんでした。それがMSOLにご依頼した背景です。

    松島:コンサルティング会社やSI会社も数多くあるなかでMSOLを選んだ理由は何だったのでしょうか。

    山口:MSOLにお願いしようと思ったのは、私たちの組織の育成方針とMSOLの考え方が一致していたところが大きいです。私たちとしては、MSOLにプロジェクトマネジメントをお願いすると同時に、将来を見据えて部内でも大規模プロジェクトをマネジメントできる人財を育てていく必要があると考えていました。MSOLには、「手離れ」を前提としたプランをご提案いただきました。つまり、最初から最後までMSOLがずっとプロジェクトマネジメントをやり続けるのではなく、その中で弊社社員も育成していただいて、最終的には弊社が自走できるところに持って行くのがゴールと、はっきりおっしゃっていただきました。そう考えると、今回のプロジェクトは、データの知見がある社員がプロジェクトマネージャーとしても成長するための大きなチャンスともいえます。この提案に私はとても共感しました。

    導入の効果

    課題の可視化と方針の策定をMSOLが支援、メンバーのプロジェクトマネジメントスキルも向上

    松島:ありがとうございます。まさに弊社としても「お客様の自立」を大きなテーマとしています。MSOLの具体的な支援内容についても教えていただけますか。

    山口:MSOLには管理が難しくなっていたオフショア開発において、発注者側としての責務を果たすためのプロジェクトマネジメントを中心にお願いしました。当時は、マネジメントに手が回らず、プロジェクトの多くの部分がブラックボックス化。レポートがきちんと上がらず、進捗や成果物の品質などプロジェクトの実態が見えていない状況でした。その課題をまずは可視化した上で、オフショア企業とのコミュニケーション方針の策定などをご支援いただきました。

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    松島:海外のオフショア企業は文化も異なりますからね。言葉の壁もありますし、曖昧に伝えて「全部言わなくてもわかるでしょう」は通じません。コミュニケーションの取り方は非常に重要といえます。

    山口:そうですね。そのギャップが雪だるま式に積み上がっていったところが本プロジェクトの初期の課題であり、MSOLのご支援によって明らかになった点でした。もしMSOLに入っていただかなかったら、おそらく一進一退で、何も進まないまま時間だけが流れてしまったかと思います。

    松島:メンバーの皆さんの自立や自走についてはどのような効果がありましたか。

    山口:MSOLのプロジェクトマネジメントのプロフェッショナルな仕事の仕方や観点などを弊社社員がしっかりと見て、何をやるべきかを習得していく流れが生まれています。メンバーのプロジェクトマネジメントスキルは徐々に向上しているように感じます。なかにはMSOLにインスピレーションをうけ、高度なプロジェクトマネジメントについて体系立てて学びたいと意思を持ち、難易度の高い資格を取得した社員もいるくらいです。育成という観点でも効果はあったと感じています。

    松島:山口さんからご覧になって、MSOLの良いところや強みはどこにあると思われますか。

    山口:様々なレイヤー・業務領域において多様な人材をお持ちになっていて、こういう人がほしいという要望にフィットした方をすぐにご紹介いただけることですね。たとえば松島さんですと、ゴールを確実に達成するために、目的をぶらさず、短期から長期のマイルストンを立てて、プロジェクトメンバーに様々な方策を提示しながら、高いプロジェクトマネジメントスキルに基づく強力な推進力を発揮していただいています。さらに社内のコミュニケーションを含めたコンフリクト・マネジメントや、レポーティングスキルが長けた方など、松島さんの右腕・左腕になるようなPMOの方々もMSOLから派遣していただき、その方々も含め、チームでしっかりとマネジメントを実現してくれています。そういったそれぞれの得意領域を持った人材をミックスさせたチームで対応いただけるのは大きな強みだと思います。

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    今後、MSOLに期待すること

    今後はMSOLと共に部門PMOも進めたい

    松島:ありがとうございます。山口さんは今後、どういった形でプロジェクトマネジメントの改善や組織マネジメントの向上に取り組まれるのでしょうか。

    山口:今は新たに部門PMOについてMSOLにご相談させていただいているところです。現在のような大規模プロジェクトではなく部門PMOとなると、いろいろな難易度の高いアプローチが必要になると考えられると思います。MSOLには大小様々な案件をまとめての管理をお願いしようと思っています。そして、プロジェクトマネージャーを志向する社員がMSOLから学びながら成長し、高度なプロジェクトマネジメントやプログラムマネジメントスキルを獲得する取り組みを進めていきたいです。

    プロジェクトを超えての部門PMOとなると、MSOLにはかなり上流の工程から入っていただくことになると思います。ANAグループは運航乗務、客室、運航支援、旅客サービス、整備などそれぞれが全く異なる業務を行う、大きな組織体であるがゆえ、慣習や文化風土も一部には独特なものがあります。それを無視することはできませんが、だからといって個別最適で仕事をするのも、ガバナンスやグループ全体の効率化の点において、問題があると認識しています。MSOLであれば、そんな文化風土を把握したうえで、第三者の目線から建設的なご指導をいただけるのではと期待しています。

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    松島:最後にどんな企業であればMSOLをおすすめできるか教えてください。

    山口:自社でプロジェクトマネジメント人材を育成したいと思っている企業にこそ、おすすめできます。先にも述べたとおり、MSOLは「手離れ」をゴールとして明言してくれている支援方針です。プロジェクトマネジメントを生業とするMSOLですら、一人のスーパーPMがすべてをこなすスタイルだけでなく、様々な素養・スキルを持っているメンバーを集めてプロジェクトチームを組んでいるケースも多々あると感じています。そのやり方からなら、私たちのような事業会社やユーザIT企業の社員でも真似しながら、徐々に成長できると思います。そういった意味で、中長期的な将来を見て、高度なプロジェクトマネジメントを自社要員中心で遂行していこうと描いている企業や、これからPMを育成していこうと考えている企業にはとてもバリューがあると思います。

    またMSOLは支援メンバーの役割に応じた納得感のある価格体系でしっかりとプロジェクトマネジメントのスキームを組んでいただけます。その点においては、費用面とスピード感を両立したプロジェクトをおまかせしたいと考えている企業にもマッチするでしょう。

    (撮影/尾関裕治 取材・文・編集/福井寿和、山田ユウキ