経営者の意思決定を支えるマネジメントパートナー MSOLのEPMOとは
日本企業でDXが進む中、プロジェクトの遂行に欠かせないのがEPMOです。EPMOとはEnterprise PMOの略称で、MSOLでは業務改革やDX推進などの変革プロジェクトを進めるにあたって課題となり得る、根本的な組織課題を解決に導くソリューションをご提案、実行支援しています。今、EPMOが求められる背景、そして、MSOLのEPMOで実現できることについて、当社PM事業本部 EPMO担当の高橋清貴に話を聞きました。
MSOLのEPMOサービスについてはこちら
経営者の意思決定を支える EPMOの役割
-MSOLのEPMOサービスの概要について教えてください。
- 高橋
経営者のコアな仕事は基本的に会社の将来像(ビジョン)を描き、その将来像に到達するために、目標を定めること。そして、必要な意思決定を素早くして投資を行っていくものです。ただ、そのコアな仕事以外にもさまざまなことに時間がとられます。それらをスムーズに進めていくことができれば、逆に社長はコア業務に注力できるとも言えます。
EPMOは、経営層のコア業務に集中してもらうために、サポートをしていくことと言えばいいでしょうか。例えば質の良い情報をあげてビジョンを描きやすくする、よりよい意思決定をしやすくする。・・・その結果として、企業が持つ経営資源を最大限活用できるようにマネジメントをサポートしていくサービスになります。
PM事業本部 高橋清貴
-MSOLではいつからEPMOサービスを開始したのですか。
- 高橋
サービスを立ち上げたのは2019年。主に上場企業からの引き合いが多くなっています。企業からは構造改革に向けて横断的な組織を立ち上げたものの、経営リソースを無駄にせず成果を上げていくには、どのようなマネジメントをすればいいのか。例えば、プラットフォームを持っている企業でプロジェクトがたくさん乱立している事業体である場合、規模拡大によってコントロールが難しくなっているため、どうすればいいのか、などの相談が多くなっています。主な相談者は、社長、あるいは社内変革推進の当事者、例えば、経営企画室やDX推進室になります。
-プロジェクト推進については、そもそも日本企業はプロジェクト型組織運営には向いていない、あるいは、個別のプロジェクト支援ではプロジェクトマネージャー(PM)を本質的に救えないなどの指摘もありますが、EPMOはこうした課題をどのように解決していくのでしょうか。
- 高橋
これまで私たちは個別プロジェクトをPMOでサポートするプロジェクトマネジメント実行支援サービスを主に提供してきました。ただ、プロジェクトの中だけでは解決できない問題もたくさん発生します。例えば、多くの企業では、社長の意思決定によってプロジェクトがスタートしたものの、他事業部の協力が得られず、各事業部がリソースを提供してくれないといった問題が起こっています。
いままで日本企業、特に基幹産業である製造業等は、主に機能型組織の形態で、それぞれの役割(所掌)を明確にして正しく遂行することで、事業を運営していく形をとっていました。しかし、計画的に予算とリソースを分配し、決められた役割の中で業務を遂行していくという従来の方法はもはや通用しなくなりました。激しく変化するニーズや環境に対し、今は臨機応変にプロジェクトを立ち上げて対応しながら、仕事を進めなければならなくなったのです。しかし、プロジェクトに対する理解が進んでいない組織では、会社から十分なサポートが得られずに頭を抱えているPMは少なくありません。そこで当事者同士が言いづらいことを交通整理して、よりよい意思決定をしてもらう、そうしたサポートをEPMOサービスでは行っているのです。
プロジェクトは常に組織のマイノリティー
-確かにプロジェクトを進める際、関係組織から協力が得られずに困っているケースは多いですね。
- 高橋
基本的にプロジェクトは組織の中ではマイノリティーの存在であり、多くの場合、企業のリソースの内1~2%程度の人員がプロジェクトを担当しています。残りの人員はいわゆる定常業務や本業と言われる業務に時間を使っており、直接的にはプロジェクトに関わっていません。それだけプロジェクトは脆弱な組織にならざるを得ず、事業部間の思惑に左右されるケースも少なくありません。そんな脆弱な組織を守っていく、サポートしていくこともEPMOの役割なのです。
-例えば、どのようにサポートするのでしょうか。
- 高橋
例えば、経営層にプロジェクトの情報を報告するとき、いつ、誰が、どんな状態まで進んだかといった線表情報、つまり、「今どんな状態であるか」を報告するケースを多く見かけますただ、経営層にとっては、その情報を得ても、何を判断すればいいのかわからないうえ、社員もがんばっているので注文も言いづらいという側面もありました。
しかし、私たちはプロジェクト自体が何を狙っていて、どのような成果を出したのか、あるいは、出そうとしているのか。次の成果を得るために何が足りないのか、何ができるのかといったことを情報として仕立て上げて報告し、経営層が次の意思決定をできるようにもっていくのです。もしうまくいってないときでも、そのリスク情報を積極的に経営層に報告して、早めに対策の検討や指示を出せるようにして、影響を最小限にとどめるようにもっていく。つまり、その行動を積み重ねてマネジメントへの良い効果を体感してもらうことで、「悪い情報は早めに発信して、対策を協議することは組織にとって良いこと」、という意識に変えていくのです。最初は、当事者同士では言いにくいこともあるため、私たち、EPMOを通してもらう。そうして、無駄に角も立たなくて済む関係性を作りながら、徐々に慣れていってもらいます。
-企業が悩む典型的な事例としては、どのようなものがあるのでしょうか。
- 高橋
例えば、経営側が打ち上げ花火的に、投資家向けのバズワードを寄せ集めたような聞こえのいい戦略を掲げることがあります。現場はそれを受け取るのですが、具体的に何をすればいいのか目的が曖昧で、現場が迷走してしまう。結果的に経営リソースを無駄に使ってしまい、相談に来られるケースです。ほかにも実態のない経営パーパスや方針を掲げたことで、それが現場の足かせとなってしまい、現場が混乱して、相談に来られる場合もあります。
MSOLは日本人に向いた日本的経営を大事にする
-このEPMOサービスによって、企業をどう変えたいと思っていますか。
- 高橋
今のビジネス環境には、それに合った適切なマネジメントがあると思うのですが、それを私たちは正しくお伝えし、正しく使ってもらって、成果を上げてほしいと考えています。私たちMSOLのビジョンは「マネジメントの力で社会のHappinessに貢献します」というものです。まさにマネジメントの力で日本企業の皆様をハッピーにしたいと思っています。
-とくにプロジェクトマネジメントは今、注目されています。日本企業はそれをうまく使いこなしていると言えるのでしょうか。
- 高橋
プロジェクトマネジメントには教科書もあり、海外の事例を中心にプロジェクトマネジメントのベストプラクティスを抽出して、汎用的に使えるようにまとめられています。それをうまく活用されている企業も多いです。しかし、それらの情報が体系的に整理され、公開されるまでには、5~6年のタイムラグがどうしても発生します。そのため、今現在で見れば、陳腐化している原則論や方法論もも少なくありません。
だからこそ、私たちは今現在、現場で起こっていることから得られた知見を方法論に仕立て直して現場に注入しているのです。トライ・アンド・エラーを繰り返しながらも、早めに今の状態に合った知見やノウハウを提供していく。このEPMOの世界は常に現在進行形であり、今やっていることが本当に正解なのか。常に問い続けなければならないのです。
例えば、ドラッカーの本を読んで実践にどう落とし込んでいくのか。ドラッカーの言っていることは正しいのですが、それを現実にどう活かしていくかが難しい。そうした原則や理論的な要素を最新の経営環境の中で実践的に肉付けしていくことが私たちの役割だと考えています。
-EPMOサービスに込められた意図とは何でしょうか。
- 高橋
経営コンサルタントのサービスの多くは欧米の経営思想がベースとなっています。非常に定量的でファクトベースで判断していきます。一方、日本人にはそうしたドライなアプローチがそぐわないところもあります。むしろ、会話や対話を通じて、現場を尊重しつつ、お互いの相互理解を深めていく面が強いのではないでしょうか。私たちはその部分を大事にして、ファクトや定量的な情報も利用しながらも、人に寄り添い対話を重ねていくような、比較的多くの日本人が受け入れやすいアプローチを追求していくことが必要だと考えています。
私たちが大事にしているのは経営と社員の信頼関係や、それを維持・発展するためのコミュニケーションです。お互いに認識齟齬がなくなって、目的が一致し、やるべきことにみんなで向かっていく。そうした下地づくりが日本では重要になると考えています。いわば、スクラムを組んでみんなでやろうといった空気感を大事にしながら、定量的な側面と両輪でやっていくことを大事にしているのです。
短期的な成功(Quick-Win)を早めに共有し、価値を実感・共感する
-ほかの戦略系経営コンサルとMSOLはどこが違うのでしょうか。
- 高橋
戦略系コンサルは戦略そのものを考えることに重きを置いていますが、私たちは、その戦略でやりたいことを前提としつつ、それをどう現実世界に落とし込んでいくのか。実行の部分をうまくマネージしていくことに重きを置いているのです。その意味で、私たちの役割は社長室や経営企画室といった社長をサポートする部門に近いと言ってもいいでしょう。
-具体的にどのように課題にアプローチしていくのでしょうか。
- 高橋
最初にお客様の状況、組織課題を客観的に分析して、弊社なりに原因やそれを解決するための改革シナリオを仮説として立てます。その仮説をもとに、実際はどうなのか、目指す姿や得たい成果は一致しているのか、お客様のコアメンバーと対話を通じて確かめていきます。
次に、コアメンバーとの対話と通じて磨いた改革シナリオを、コアメンバー以外の関係者に納得していただくために、通常の会議やワークショップを通じて理解を深めながらさらに磨いていきます。あえてワークショップを開く目的は、当事者がその場で意見交換をしていくことで、「上司やコンサルから与えられた改革案」ではなく、「自分たちが作り上げた改革案」として受け止めてもらい、自分事にしていくためです。当事者が自分で発言していくことで、自分事にしていくのです。ただ、そこまでは机上の理論の状態です。そのため、改革案で決めた施策を実行して、短期的な成功(Quick-Win)を早めに共有し、価値を実感・共感してもらうようにしています。
-この仕事で苦労した経験はありますか。
- 高橋
ある製造業で、これまでの大量生産から少量受注生産に転換するための組織改革に関わっていたときです。そこではプロジェクト的な組織に変わったものの、機能別組織であったがゆえに当初はうまくいかないケースが多くありました。そこにコンサルに入ったのですが、古い事業体質を持っていたため、最初はこちらの話を全く聞いてくれませんでした。。「俺たちのやり方でこれまでやってきたのだから」と言われ、「プロジェクトマネジメントなんていらない」と批判されました。なかなか受け入れてもらえなかったのですが、時間をかけて「プロジェクトマネジメントがあると何が変わるのか」を丁寧にご説明させていただきました。
その活動を通じて、共感してもらえるコアメンバーを発掘し、トライアルプロジェクトを組成して成功を体感してもらいました。それを所属する組織に対して発信してもらうことで、徐々に関係者の意識を変えていく等、粘り強く寄り添いました。本当に細かく対応しながら、3年くらいの時間をかけて変えていきましたね。
-今、クライアントが求めているもの、あるいは、課題として共通しているところはあるのでしょうか。
- 高橋
最近、かつての一時代をつくり上げた経営層の方々が、引退するタイミングで事業継承する時期を迎えたり、AI等の技術革新をテコに新しい事業を検討している企業が増えています。そのときオーナー社長や実力社長と異なり、次世代の経営層が将来像をなかなか描けない、新しい事業に適するための組織運営方法が分からないという問題が起こっています。これまでの知見をどうやって血肉にして次世代に受け継いでいくのか。これまでの優れたマネジメントを体系化してほしい。あるいは、カリスマに頼るのではなく、組織やチームの力でどう良い方向にもっていけばいいのかといった相談が増えています。その意味で言えば、今は時代の変わり目なのではないかと感じています。そうした時代の中で、ご相談があればぜひMSOLにお声がけいただきたいと思っています。
(インタビュー実施日:2023年10月25日)