【セミナーレポート】グローバルマネジメントカンファレンス2026 ~組織の変革と価値創造~
はじめに
プロジェクトの成功を「QCD(品質・コスト・納期)」だけで測る時代は終わりを迎えつつあります。
AIが急速に普及し、社会構造が激変する中で、組織はどのように変革し、新たな価値を創造すべきなのでしょうか。
本セミナーでは、PMI(プロジェクトマネジメント協会)のアジア太平洋地域マネージングディレクターであるSoHyun Kang氏、PMOの世界的権威であるAmerico Pinto氏、そして元ソニープレイステーション事業CTOの茶谷公之氏をゲストに迎えました。
価値創造型のプロジェクトマネジメント、AIによるPMOの進化、日本の少子高齢化を活かした次世代産業の構想など、多岐にわたる濃密な議論が交わされたセッションの全容をお届けします。
Session 1:PMIビジョンとAIが変えるプロジェクトの未来
登壇者:
・SoHyun Kang氏(PMI アジア太平洋地域 マネージングディレクター)
・西田 友宏(株式会社マネジメントソリューションズ ディレクター)
プロジェクトの成功を「価値創造」へ再定義する
日本におけるプロジェクトの成功は、依然として「QCD」の遵守と捉えられがちです。しかしソヒュン氏は、プロジェクトを単なるタスク遂行ではなく、企業のビジネスを劇的に変える「トランスフォーメーション(変革)」の手段であるべきだと指摘しました。 今後のプロジェクトマネージャー(PM)には、QCDを前提とした上で「デリバリー」と「価値(バリュー)」の両立を実現し、単なる管理の担い手から企業の成長に関わる「バリューパートナー」へとマインドセットを転換することが求められています。
価値を可視化し、AIを「Copilot」として活用する
価値を創出するためには、プロジェクト開始前に明確なビジョンと「ファーストベネフィット(最初に得られる便益)」を定義し、KPIとして進捗を定量的に測定し続けるプロセスが不可欠です。 また、生成AIの登場により、PMの役割も変化しています。AIを「Copilot(副操縦士)」としてドキュメンテーションなどの煩雑な業務を任せることで、PMはより戦略的な役割に集中できます。ただし、AIの出力には情報の正確性(ハルシネーション)の課題があるため、人間の「経験」に基づいた検証(バリデーション)を組み合わせるハイブリッドなアプローチが成功の鍵となります。
講演中のSoHyun氏(左)、西田(右)
【追加情報:M.O.R.E.フレームワークの実践に向けて】
プロジェクトの価値を最大化するためのフレームワーク「M.O.R.E.」について、具体的なユースケースや学習コンテンツを公開しています。下記QRコードより詳細をご確認いただけます。
(※PMI IDへの無料登録が必要な英語版コンテンツとなります)
◆実践ガイド(Playbook)はこちら
・タイトル:From Vision to Practice (A Playbook to Apply M.O.R.E.)
・URL:https://qr.codes/QHi6b4
◆eラーニングでの学習はこちら
・タイトル:PMI Essentials M.O.R.E. Maximizing Project Success
・URL:https://qr.link/BIMVOs
Session 2:戦略的パートナーとしてのPMO ― 事務局から価値創造の主体へ
登壇者:
・Americo Pinto氏(PMI PMOグローバルアライアンス マネージングディレクター)
PMOを「単なる事務局」という誤解から解き放つ
PMOの世界的な権威であるAmerico氏は、「PMOは単なる事務局ではない」と強く強調しました。PMOは、これまでのようにプロジェクト進捗を監視するなどのコントロール機能に偏った役割から脱却し、組織全体を俯瞰しながら、顧客やステークホルダーと連携し、価値創造を推進する「価値駆動型のサービス提供者(Value-Driven Service Provider)」へと進化することが期待されています。
価値駆動型サービス提供者としてのPMOとAIとの統合
Americo氏が提唱する革新的なコンセプトの一つが、PMOを価値駆動型のサービス提供者として位置づけ、顧客やステークホルダーの個別ニーズに応じてPMOサービスを提供するという考え方です。
このモデルでは、画一的なガバナンスを押し付けるのではなく、プロジェクト、プログラム、ポートフォリオの目的や状況に応じて、以下のような価値を提供します。
・ワークショップやリアルタイムな情報の可視化など、多様なサービスの提供
・プロジェクトと組織全体の戦略を結び付けるリレーションシップ・マネジメント
・プロジェクトを通じてどのように価値が創出されてきたかという「軌跡」を、エビデンスに基づいて語るストーリーテリング
さらに、AIの台頭はPMOにとって大きなチャンスとなります。AIとの統合により、PMOは反復的な事務作業を削減し、意思決定支援や高度な分析といった、より付加価値の高い活動にリソースを集中させることが可能になります。その結果、PMOは組織変革を推進する戦略的イネーブラーとして、極めて大きなビジネスインパクトを生み出す存在となるのです。
講演中のAmerico氏
Session 3:少子高齢化を逆手に取る ― シニア社会が生む次世代輸出産業
登壇者:
・茶谷 公之氏(オフィスちゃたに株式会社 代表取締役社長CEO / 元ソニープレイステーション事業CTO)
超高齢社会を「最大のチャンス」に変える
茶谷氏と西田の対談では、日本の「老齢人口の増加」を衰退の要因ではなく、世界に先駆けた「実験市場」として捉える逆転の発想が語られました。自動車産業に続く次なる巨大産業として、「シニア向けプロダクトを次世代の輸出産業にする」という壮大な構想が提示されました。
フィジカルAIと新たな働き方「ソロプレナー」
この構想の鍵となるのが「フィジカルAI」と「ロボティクス」です。AIとロボットが融合し、日本独自の「おもてなしの作法」が加わることで、世界で勝てるプロダクトが生まれます。さらに、現場に眠る「データ化されていない知恵(暗黙知)」をAIに学習させることで、技術や経験を継承する仕組みが重要になります。
働き方に関しても変容が予測されます。AIを経営陣(CXO)の役割として使いこなす「ソロプレナー(一人社長×AI企業)」が台頭し、特定の専門性を持つ個人がプロジェクトごとに集まって最高の結果を出し解散するような、「メッシュネットワーク型のタスクオーケストレーション」が主流になっていくと茶谷氏は語りました。
講演中の茶谷氏
結び:AI時代における「人間の意志」と価値創造
AIが定型業務を自動化する時代だからこそ、人間に求められるのは「どの方角を目指すか」という確固たる意志と、「どう価値を創るか」を突き詰める情熱です。QCDを守ることは前提であり、その先にある「ビジネスや社会にどのような価値を届けるか」を定義し、決断し、実行することこそが人間にしかできない領域です。
MSOLは、人とAIが融合し、価値創造のあり方が劇的に変わるこの時代において、組織が真の「価値創造」をデリバリーできるよう、今後も伴走し続けます。