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プロジェクトを失敗させないヒント24『意思決定を促す「教父」のような存在』
『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは
本記事は、プロジェクトを成功させるために必要なノウハウを、数百の支援実績経験をもとに記述した『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』より、 1つずつヒントをご紹介していく企画です。プロジェクトマネジメントについて、何らかの気づきを得るきっかけになれば幸いです。
当社はプロジェクトマネジメントの知識と経験を有し、皆様のプロジェクトが成功するお手伝いをさせていただいております。 プロジェクトマネジメントに関する疑問や課題がある方、成功への道筋をお探しの方、どうぞお気軽にご連絡ください。
お問合せはこちらからどうぞ。
※『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』をPDFまたは電子書籍でダウンロードできます
プロジェクト内の人間関係にごたごたがあると、プロジェクトマネジャーといえども視野が狭くなることがあります。こういう時、PMOはコンサルティングやカウンセリングのスキルを使って人間関係の調整役を務め、プロジェクトマネジャーが的確な意思決定をできるように支援します。
あるプロジェクトで、PMOからの提案にプロジェクトマネジャーが怒りを爆発させました。もちろん、PMOとしてはプロジェクトの状況を精査し、ぎりぎりの妥協点を提案したわけですが、プロジェクト内の不和が一因となってプロジェクトマネジャーが強く抵抗したのです。こんな具合に。
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プロジェクトマネジャー:いまさらスケジュールを遅らせるなんて、問題を起こしたチームの責任はどうなるんだ。
PMO:全体の納期を変えるのではなく、後続作業に影響しない一部の作業を後回しにするだけです。他のチームに影響のある作業に集中し、プロジェクト全体の遅延を回避しようという提案です。
プロジェクトマネジャー:そもそも遅れているチームのリーダーは「絶対に遅れずに完了する」と豪語していたではないか。遅れたから「はい、リスケします」では、他のチームに示しがつかない。そんなことでは、プロジェクトをまとめることはできないぞ。一部の作業を後回しにしたところで、それ自体が遅延したらどうするんだ。
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自らのリーダーシップに自信を持つプロジェクトマネジャーは、妥協そのものがプロジェクト全体に悪影響を与えると考えています。このままPMOとプロジェクトマネジャーが押し問答を繰り返すだけでは、状況は悪化するばかりでしょう。
プロジェクトマネジャーを動かすには、どうすべきか
いくら管理プロセスを徹底し、プロジェクトを見える化したところで、それだけではプロジェクトの遅延を回避できません。プロジェクトメンバーの力量やプロジェクトマネジャーのマネジメント力なくして、プロジェクトは成功しません。『[ヒント11]PMOは「管理責任」を負うのか』で述べたようにプロジェクトマネジメントの生産性を上げることがPMOの責任範囲になります。プロジェクトマネジャーの意思決定を促進させることで、プロジェクトマネジメントの生産性を上げることが可能になります。
さて、意思決定を促すには、何が必要でしょうか。細かな進捗状況の報告や遅延している課題件数を報告することが、意思決定を促すことにつながるでしょうか。確かに、それらの情報だけでもプロジェクトの状況を把握し、判断できるかもしれません。しかし、プロジェクトの遅延や品質悪化の改善に向けた報告は、各チームからの報告内容をそのまま伝えるだけではほとんど何の役にも立ちません。
報告の流れとしては、一般に「問題の背景」→「問題の源泉(なぜその問題が起きたのか)」→「問題の解決策」となります。問題の源泉はロジックツリーなどを使って、論理的に説明すると分かりやすいと思います。また、問題の解決策として複数の案を出しておくと検討しやすいでしょう。それぞれのメリットとデメリットを併記するのもいいと思います。
ただ、いくら立派な報告内容であっても、最後はプロジェクトマネジャーの腹一つで決まるところもあります。冒頭のやり取りのように、チームに対するプロジェクトマネジャーの不信感が根強いと、論理的な説明だけではなかなか納得してもらえません。
かといって、遅延を起こしたチームリーダーを前面に出し、その責を問うたところで、事態が好転するでしょうか。プロジェクト全体の要員確保の問題や全体のマスタープランが厳しすぎたという問題もよくある話ですから、チームリーダーだけに責任を問うわけにはいきません。プロジェクトマネジャーを説得し、チームリーダーに新しいスケジュールの順守をコミットさせるには、PMOが両者の間に立ち、調整役に徹すべきと考えます。
組織の潤滑油の役割が必要
最もレベルの高いPMOは、人間関係の調整役までこなすPMOだと思います。特に、PMOの責任者である「PMOリード」は、コンサルティングやカウンセリングのスキルを持つ必要があります。
特殊なスキルというわけではありません。組織の潤滑油としての存在感があればよいと思います。
表立って話せない内容の相談を受けるようになると、公式な報告書や会議から読み取れない現場の実情が理解できるようになります。その内容を踏まえて、プロジェクトマネジャーに進言したり、各チームと調整したりすると、組織の一体感が生まれ、自然とプロジェクトマネジメントの生産性が高まってきます。
経営学者のP.F.ドラッカー氏は1980年代の日本企業の研究の中で、次のような考えを示しています。「日本企業では、ミドルマネジメントの中でも特に尊敬されている人々は教父と呼ばれ、社内の若い人々の面倒をみる」としています。
これは日本企業の経営の話ですが、日本企業のプロジェクトマネジメントの現場でも、この「教父」役が求められていると感じます。その役割を担うべき人は、それこそPMOなのではないでしょうか。