プロジェクトを失敗させないヒント37『人のつながりまで引き継ぐ』

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    『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

    『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

    本記事は、プロジェクトを成功させるために必要なノウハウを、数百の支援実績経験をもとに記述した『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』より、 1つずつヒントをご紹介していく企画です。プロジェクトマネジメントについて、何らかの気づきを得るきっかけになれば幸いです。

    当社はプロジェクトマネジメントの知識と経験を有し、皆様のプロジェクトが成功するお手伝いをさせていただいております。 プロジェクトマネジメントに関する疑問や課題がある方、成功への道筋をお探しの方、どうぞお気軽にご連絡ください。
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    次は、私が失敗した、もう1つの引き継ぎミスについて述べます。あるプロジェクトで、『[ヒント36]引き継ぎマネジメントの7つの勘所』の7つの点に注意しながら、引き継ぎを行いました。業務内容をほぼ完璧に引き継ぎ、約1週間は後任者と並行して業務を進め、念には念を入れました。引き継ぎの品質には何も問題がないはずでした。

    ところが、引き継いだ後1~2週間ほどたって、後任者の立ち上がり状況を確認したところ、パフォーマンスがあまり上がっていないことに気が付きました。業務の内容は完全に引き継いだはずでしたが、何がまずかったのでしょうか。

    様々な人にヒアリングした結果、どうやら他のメンバーやキーパーソンとうまくコミュニケーションができていないことが分かりました。その担当者は、今までいくつもの難しいプロジェクトで実績を残しているので、もともとコミュニケーションが苦手な人ではありません。どちらかというと、周りからは「優秀な人」と見られていました。

    ここに落とし穴がありました。後任者は優秀な人という先入観のもとに引き継ぎを進めていたため、私がそのプロジェクトで作り上げてきた「人のつながり」の引き継ぎを怠っていたのです。心のどこかで、「プロジェクト内の人間関係なんて個人が個別に作り上げていくもの」という誤った考えがあったのです。

    PMOとしては、業務のほぼ90%がコミュニケーションで成り立っていると言っても過言ではありません。しかし、その肝心のコミュニケーションの基礎である人のつながりの引き継ぎを、後任者の紹介程度で済ませてしまったことが失敗の原因だったのです。

    プロジェクトにおいて、人と人との信頼関係を構築していくのは、一朝一夕にできるものではありません。ある程度の時間をかけて、徐々に人と人とのつながりができてくるものです。

    しかし、プロジェクト途中の引き継ぎにおいて、人と人とのつながりを個別に作り直していくとしたら時間の余裕がありません。特にPMOという立場であるならば、立ち上がりが遅れて、十分なパフォーマンスを出せない恐れがあります。



    キーパーソンを交えての引き継ぎが重要

    それを回避する1つの方法として、「人と人とのつながり」もきちんと引き継ぐべきなのです。多少時間はかかるかもしれませんが、キーパーソンを交えて引き継ぎを行うとより効果的です。プロジェクトの背景や経緯、今後の方針、キーパーソンの期待値など、引き継ぎ資料だけでは表現することができない情報に加え、そのキーパーソンとの人としてのつながりも引き継ぐことができるからです。

    ただし、人と人とのつながりの引き継ぎができたからといって、安心はできません。悲しいかな、どのプロジェクトでも必ず「人の好き嫌い」は付いて回ります。プロジェクトは仲の良い好きな人ばかりが集まってできた組織ではないため、仕方のないことだと思います。

    正直な話、どんなに前任者とキーパーソンの関係が良かったとしても、その良好な関係を後任者がそのままそっくり継承できるかどうかは分かりません。引き継ぎ後に、しばらく様子を見てみないと分からないのです。こういう可能性を踏まえたうえで、引き継ぎを進めてみてください。

    繰り返しになりますが、PMOの業務のほぼ90%がコミュニケーションで成り立っています。そうである以上、肝心のコミュニケーションの基礎である人と人とのつながりを、後任者の紹介程度で引き継げると考えてはいけないのです。