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プロジェクトを失敗させないヒント50『見える化では見えない予兆をつかむ』
『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは
本記事は、プロジェクトを成功させるために必要なノウハウを、数百の支援実績経験をもとに記述した『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』より、 1つずつヒントをご紹介していく企画です。プロジェクトマネジメントについて、何らかの気づきを得るきっかけになれば幸いです。
当社はプロジェクトマネジメントの知識と経験を有し、皆様のプロジェクトが成功するお手伝いをさせていただいております。 プロジェクトマネジメントに関する疑問や課題がある方、成功への道筋をお探しの方、どうぞお気軽にご連絡ください。
お問合せはこちらからどうぞ。
※『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』をPDFまたは電子書籍でダウンロードできます
プロジェクトでは見える化が重要です。一般に、現場の状況を定量的に見るアプローチが取られていますが、それだけでは危ない予兆(リスク)を見落としやすいものです。PMOは見える化では「見えないもの」にも敏感になり、プロジェクトマネジャーの意思決定を支援する必要があります。
進捗を成果物の完了数で計測したり、課題の未解決数を原因分類ごとに見える化したりするなど、確かに定量的な指標に基づく見える化が定着すると、プロジェクトの状況を把握しやすくなります。しかし、見える化した定量的な情報ばかりに注目していると、プロジェクトに潜む危険な予兆に気づかないことがあります。数字に頼りすぎてはいけません。以下の4項目は重要な情報ですが、定量的に把握できるわけではありません。
<クライアントの満足度>
● 満足している場合
クライアントから冗談を言われたり、会議中も笑いがあったりします
● 満足していない場合
こちらの発言に顔をしかめたり、目を合わせなかったりします
<チーム間の関係>
● 良好な場合
会議が始まる前に雑談したり、会議後に一緒に食事に行ったりします
● 悪い場合
遅刻が多かったり、会議中もお互いの口数が少なかったりします
<プロジェクトルームの雰囲気>
● 良好な場合
「おはようございます」「お疲れさまでした」「○○に行ってきます」などのあいさつが当たり前のようにあったり、適度な雑談があったりします
● 悪い場合
あいさつや会話がなく、誰が今どこで何をしているのか把握できない状態であったり、仕事中も無言だったりします
<メンバーのモチベーション>
● 高い場合
出勤時刻が早かったり、会議でポジティブな発言が多かったりします
● 低い場合
遅刻や休みが多かったり、会議でネガティブな発言が多かったりします
これらは見える化では決して見えてきません。プロジェクトが円滑に進んでいるように見えても、これらの危険な予兆を見逃すと、後々問題を引き起こしかねません。
プロジェクトが小規模な場合や初期フェーズにおいては、プロジェクトマネジャーにも余裕があるでしょう。そういう場面では、プロジェクトマネジャーがクライアントやメンバーと積極的にコミュニケーションを取って、予兆をつかむ機会がたくさんあります。危ないのは、プロジェクトが大規模な場合や遅れ始めた時です。プロジェクトマネジャーに余裕がなくなってくると、上記のような点に気づかなくなります。
「定量化できないもの」にこそ注目する
PMOはプロジェクトマネジャーの目となって、プロジェクト内に起こるあらゆる「変化」を追い続ける必要があります。日常の会議や行動から、次のような危ない予兆に注目すべきです。
<クライアントの満足度>
● 着目点 顔色や相談内容
(1)相談される回数や相談内容の変化を捉える
(2)こちらから提案や依頼をした際、渋い顔やしかめっ面をしていないか、微妙な表情の変化を観察する
<チーム間の関係>
● 着目点 会議中の笑いや会話の様子
(1)会議中に起こった笑いの回数や、盛り上がり具合の変化を捉える
(2)会議中にチーム間で目を合わせながら会話をしているかを見る
<プロジェクトルームの雰囲気>
● 着目点 活気とメンバー間の協力関係
(1)メールでの連絡だけでなく、声かけができているか耳を澄ます
(2)他メンバーが不在の際、「どこにいるのか」を知っているか尋ねてみる
<メンバーのモチベーション>
● 着目点 発言内容や勤務状況
(1)ポジティブ発言とネガティブ発言の回数や内容の変化を捉える
(2)遅刻の回数や休暇の回数の変化を捉える
変化を捉えるためには、笑いの回数や相談の回数など、普段の会話や表情、行動に着目する必要があります。PMOは、自身の「目」「耳」「口」を総動員して、変化を感じ取れるようにしなければなりません。
ただし、大規模なプロジェクトなどでは、PMOとプロジェクトマネジャーが協力しても、あらゆる変化を捉えることが困難な場合があります。そういう時は、「こういう行動や表情の変化を捉えよう」という内容の「見えないものチェックリスト」を作成して、チームリーダーと共有することをお勧めします。意外なことに、若手(チームリーダーなど)が抱く「何かおかしいぞ」「何となく危なそうだな」といった直感が、結構、的を射ているケースがあります。
PMOは現場に足を運んでプロジェクトに起こり得る様々な出来事に気を配り、プロジェクトマネジャーの正しい意思決定を支援する必要があります。見える化で取得できる定量情報は既に発生した事象の結果でしかありません。プロジェクトの成否に関わる予兆(リスク)まで加味すべきです。
定量的な情報の「裏」に潜むもの
クライアントの満足度やチーム間の関係、プロジェクトルームの雰囲気、メンバーのモチベーションなどは重要な情報でありながら、定量的な数字では見えてきません。チーム間の関係悪化やメンバーのモチベーションが低下すると、結果的に進捗報告の遅延や課題未解決数の増加となって、数字に表れてきますが、「何が原因か」を数字だけから判断するのは困難です。
定量的な情報の「裏」にある情報にまで気を配る。そういう視点がPMOには求められます。特にプロジェクトが逼迫してくると、悩みや疲れ、焦りを抱えているメンバーも多くなります。期限が迫れば、チームの雰囲気も悪くなります。これらは全てプロジェクトの運営がうまくいかなくなる予兆なのです。