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プロジェクトを失敗させないヒント51『リスク管理がうまくいかない7つの理由』(前編)
『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

本記事は、プロジェクトを成功させるために必要なノウハウを、数百の支援実績経験をもとに記述した『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』より、 1つずつヒントをご紹介していく企画です。プロジェクトマネジメントについて、何らかの気づきを得るきっかけになれば幸いです。
当社はプロジェクトマネジメントの知識と経験を有し、皆様のプロジェクトが成功するお手伝いをさせていただいております。 プロジェクトマネジメントに関する疑問や課題がある方、成功への道筋をお探しの方、どうぞお気軽にご連絡ください。
お問合せはこちらからどうぞ。
※『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』をPDFまたは電子書籍でダウンロードできます
プロジェクトマネジメントのなかで、重要だと知りながら、うまく実践できていないことの筆頭にあるのは、リスク管理ではないでしょうか。取り組んだとしても、プロジェクトの初期にリスク管理表を作っておしまい、というケースが多すぎます。いったいなぜ、そうなってしまうのでしょうか。
プロジェクトマネジャーやPMOにとって、リスク管理は疑いなく重要な責務の1つです。しかし、リスク管理の重要性を頭では分かっていても、プロジェクトの現場ではなかなか真剣に取り組めていないのが実情です。
私の経験から言って、名だたるシステムインテグレーターや大手企業でも、PMBOKやプロジェクトマネジメントの書籍通りに、まじめにリスク管理を実施できている現場はほとんどありません。なぜリスク管理はまじめに取り組まれないのか、理由を探っていきたいと思います。
リスク管理がうまくいかない理由として、会社の文化や業界の慣習、さらに言ってしまえば日本人の国民性など、様々な原因を挙げることができます。これはこれで議論に値するテーマではありますが、ここでは「なぜ現場でリスク管理がうまくいかないか」というミクロの視点で考えてみたいと思います。私の経験から、次の7つの理由が考えられます。
(1)リスクは一意に特定、定義できない
(2)リスク管理のやり方が分からない
(3)標準タスクだからやるのであり、裏を返せば「やらされ感」がある
(4)リスク管理の成果が見えない
(5)メンバーにとっては余計な負担
(6)本当にやる意味があるか確信が持てない
(7)作りっぱなしの最たるもの
7つの理由は、最初の2つの技術的な理由と、後の5つの心理的な理由に分けることができます。それぞれの理由について、詳細を考えてみましょう。
今回は、前半の4つをご紹介します。
(理由1)リスクは一意に特定、定義できない
最初の理由は、そもそも「リスクとは何か分からない」というものです。PMBOK(第4版)ではリスクを「もし発生すれば、プロジェクト目標にプラスあるいはマイナスの影響を及ぼす不確実な事象あるいは状態」と定義しています。
みなさんの現場で「このリスクの定義に従って、プロジェクトにある一番大きなリスクを1つ挙げてください」と問いかけられたとしたら、どうなるでしょう。おそらく10人が10人、同じリスクを挙げることはまずないと思います。
なぜなら、その人の立場や視点、今までの経験、あるいはプロジェクトにかける思いや生まれ持った性格によって、リスクの捉え方が違うからです。一意に特定できないリスクの性質が、管理のハードルを高くしています。ただ単に、プロジェクトが遅延するリスクと言っても様々な原因が考えられますし、そのどれもが100%正しくもなく、100%間違っているとも言い切れません。この特性がリスクをつかみどころのないものにしてしまっています。
(理由2)リスク管理のやり方が分からない
2つめの理由として、リスク管理のノウハウがないという現実があります。品質管理や進捗管理と比べれば、圧倒的に不足していると言っていいでしょう。PMBOKなどの知識体系があり、どんな作業をどのような順番で実施するかまでは記載されています。とはいえ、どうすれば効果的に実施できるかというハウツーの部分は、経験として蓄積していくしかありません。
つまり、知識として「何をすればよいか知っている」ということと、実作業として「滞りなく効果的に実施できる」との間には大きな溝があるのです。リスク管理のハウツー本はたくさん出ていますが、書籍通りに実施できずに頓挫してしまうのはそのためです。
2つのできない理由は、テクニックの側面が強いです。しかし、本当にリスク管理が定着しないのは、理由3~7の心理的な要因の方が大きいと考えられます。
(理由3)標準タスクだからやるのであり、裏を返せば「やらされ感」がある
今まで経験した現場でリスク管理を実施する一番の理由は「社内標準で決められているから実施しなければならない」という、何とも後ろ向きな理由でした。私が経験した話をしましょう。
あるフェーズの最後になって「社内標準で決められたリスク管理表を作っていないと、社内の品質管理担当部門から叱られた。次のフェーズに進めないから作っておいて」ということがありました。このように、未来に発生するリスクに対して事前に対処するという主体的な行為・目的とは程遠く、後ろ向きな動機でリスク管理を実施しても、リスク管理表を作ること自体が目的となってしまいます。形式的に作るだけであれば、リスク管理表を作る負荷だけが増えてしまい、プロジェクトにとって何のメリットもありません。
(理由4)リスク管理の成果が見えない
リスク管理が他のタスクと大きく異なるのは「起こるかもしれないこと」に対しての予防的な作業だという点です。この特徴のせいで、リスク管理の成果が見えづらいことがあります。
極端な話、そのリスクが顕在化しなければ、スポットライトを浴びることはありません。誰にもリスク管理の成果を評価してもらえないのです。モチベーションも下がるでしょう。それが現実です。そのためにも、プロジェクト全体でリスク管理の価値を認めてあげる必要があります。
後半の3つは次回、「ヒント51 リスク管理がうまくいかない7つの理由」でご紹介します。