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プロジェクトを失敗させないヒント55『うまい「関所」の使い方』
『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは
本記事は、プロジェクトを成功させるために必要なノウハウを、数百の支援実績経験をもとに記述した『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』より、 1つずつヒントをご紹介していく企画です。プロジェクトマネジメントについて、何らかの気づきを得るきっかけになれば幸いです。
当社はプロジェクトマネジメントの知識と経験を有し、皆様のプロジェクトが成功するお手伝いをさせていただいております。 プロジェクトマネジメントに関する疑問や課題がある方、成功への道筋をお探しの方、どうぞお気軽にご連絡ください。
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※『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』をPDFまたは電子書籍でダウンロードできます
ある程度大きなプロジェクトの場合、プロジェクトの中間の状況を判断する“関所”のようなイベントを置く会社が多いと思います。しかし、この関所が危ないところに手を打って、何とか前進できるようにする場というよりは、「何か粗探しをしてプロジェクトを止めようとしている場」ではないかと感じられることも少なくありません。
フェーズの切れ目などの要所要所において、プロジェクト外の組織や機関から客観的な検査を受けなければならないプロジェクトを経験したことがある人は多いと思います。プロジェクト外の組織とは、「品質管理部」「プロジェクト管理部」「プロジェクト監査室」のような名前で呼ばれていたりします。それらの組織はプロジェクトの状況を、次の2点から客観的に判断します。
(1)該当フェーズの終了判断:予定通りのスケジュール、コストで、予定通りのアウトプットが出ているか
(2)次フェーズの開始判断あるいはサービスインの判断:次のフェーズの予定がしっかりと立てられていて、このまま次のフェーズ(サービスイン)に進んでも問題ないか
しかし、その判断内容と言えば、表面的・形式的でしかなく、役に立たないものになっていないでしょうか。普段は現場に全く顔を出さない人たちがやってきて、チェックリストに従いながらヒアリングを行うだけとか、現場から所定のチェックリストを出させて、それを見て当たり障りのないコメントを返してくるような場合がとても多いと思います。
会社によっては、同じようなプロジェクトの経験を積んできた有識者や他部門の有識者を交えて、会議形式で質疑応答をする場合もあると思います。こういう場では活発な発言がみられますが、別の意味で役に立たないものになりがちです。私が今まで経験してきた多くの場合、そこはプロジェクト担当者の“つるし上げの場”になっていました。
つるし上げで余計な苦労を強いられる
関所の番人として判断を下す人たちは、自分の成功(失敗)体験を現在のプロジェクトの状況に照らし合わせ、危険な状況をあぶり出します。ただし、現場の状況を全て把握できているわけではないため、具体的な対応策までは言及できません。大抵は問題点を指摘するだけです。
ですから、「今の状況からして、私たち(レビューワー側)が検討したこの具体的な対策案を実施した方がいい。明日から一緒にやりましょう」とか、「それでは私たち(レビューワー側)がお客様の品質部門と調整して道筋をつけてあげましょう」といった、レビューワー主導の具体的な支援案は、これまでに片手で数えられるほどしかありませんでした。
最悪の場合、自分(レビューワー)の経験の豊富さや権限を誇示しようと「あのリスク(起きそうにないリスク)は考えたのか。どうなっているんだ。3日以内に対応策を考えろ」などと、あまり本質的ではない指摘をして、プロジェクトマネジャーの仕事を増やすだけの場合も少なくありません。
こうした重箱の隅をつつくようなことに熱心になっている会議は、意外と多いものです。現場からすれば、「いまさら言われても困る。分かっているなら、もっと早く言ってくれよ」というのが本音でしょう。
「関所を利用する」という発想の転換
では、このような不毛な関所の場合は、どのように対応するべきでしょうか。考え方としては2つあります。1つは、関所はそういうものだとして一度受け入れ、プロジェクト内の総点検の場として関所を活用していく方法。もう1つは、不毛な関所にならないように、関所のレビューワーをプロジェクトに引き込み、知見を有効に活用していく方法です。
前者は、関所自体の役割を「自分たちがプロジェクトの総点検をする場」と位置付け、有識者から「チェックを受ける」という考えから、有識者を「利用する」という発想の転換をすることです。コメントやチェックリストで見つかった問題に優先順位を付け、PMOが中心となって真摯に対応していくのです。
この作業に対する工数やスケジュールを、プロジェクトとして事前に見込んでおくことがポイントとなります。あまりにも現実とかけ離れたり、本質とかけ離れたりした指摘に対しては、プロジェクトマネジャーやPMOがうまく受け流し、現場への影響を最小限に抑えることも重要です。
一方で後者は、関所を通る時だけレビューワーに参加してもらうのではなく、日頃から進捗会議などに参加してもらい、現場の状況を知っておいてもらうことが必要です。何かあるごとにレビューワーに相談し、レビューワーをプロジェクトの味方にできれば、本来の関所の機能を果たせるでしょう。
レビューワー全員がプロジェクトに常に関わるのは難しいかもしれませんが、1人でも多くプロジェクト側に引き込めれば、メリットがあります。プロジェクト側の状況を伝えるスポークスマンとしての役割を果たしてもらうことができれば、関所の番人に対応する時の負荷を減らすことができます。
以上のように、関所が機能していない場合の考えを述べてきましたが、会社やプロジェクトによっては「文句を言うだけではない関所」の役割をしっかり果たしている場合もあります。その時は、レビューワーの意見をきちんと聞いて、レビューワーを巻き込み、対応を進めていくと、より良い効果が得られると思います。