プロジェクトマネジメントのヒント

プロジェクトを失敗させないヒント57『作業の依存関係を1ページで見せる』

作成者: MSOL|Dec 13, 2024 1:03:50 AM

 

各メンバーの日々の進捗を管理するのは細か過ぎても管理負荷が大きく、マスタースケジュールを基にすると粗過ぎます。この溝を埋めるため、PMOが独自の進捗レポートを作成してはどうでしょう。要となる情報は、WBSで定義した作業間の依存関係です。ここだけを抜き出して1ページで図示すれば、クリティカルパスを管理するよりも実践的な進捗管理ができます。

PMOが把握しておくべき進捗状況は「細か過ぎず、粗過ぎず」が基本です。最も細かな作業というと、個々人で把握している日々の作業ですが、プロジェクト全体の作業を把握するために、そこまでの情報収集は行いません。あるメンバーに作業負荷がかかり過ぎている場合に、日々の作業状況をチェックすることもありますが、通常の進捗把握のために、そこまで行うことはないでしょう。

一般的には、WBSとして作成された作業スケジュールに対する進捗だと思います。WBSは一言で言うと「実施すべき作業を最小単位にまで分解し、階層化したもの」です。初めにプロジェクトで作成すべきアウトプットから必要な作業を洗い出し、それらを細かく分解して、最終的に構造化していくのです。

分かりやすい例として、カレーライスを作るという作業を考えてみましょう。大きな作業単位としては「1.計画」「2.買い出し」「3.調理」に分けられます。次に「1.計画」は、「1.1.レシピ作成」「1.2.材料の洗い出し」「1.3.予算作成」と分解できます。さらに「1.1.レシピ作成」は、「1.1.1.インターネットで検索」「1.1.2.雑誌で調査」「1.1.3.母親にヒアリング」と分解が可能です。「1.1.1.インターネットで検索」をさらに細かく分解することも可能です。「どのサイトで、どんな手順で検索するのか」というところまで分解できますし、「レシピを印刷する」という作業を追加できると思います。しかし、このケースでは、WBSでそこまで記述する必要はありません。

PMOの話に戻りましょう。プロジェクト全体の進捗を把握するためには、「1.1.レシピ作成」の階層レベルが適当なのでしょうか、それとも「1.1.1.インターネットで検索」レベルが適当なのでしょうか。PMOとして、時々判断に悩むことがあります。特に小規模のプロジェクトであれば、「1.1.1.」のレベルで把握することはできますが、プロジェクトメンバーが20人以上になってくると、細か過ぎて逆によく分からないということもあります。

「ざっくり、ポイントだけ教えてほしい」というプロジェクトマネジャーもいます。その際に、最も粗いスケジュールとして、プロジェクト全体のプランを示したマスタースケジュールを用いて説明すると、今度は「ざっくり過ぎるよ」ということにもなります。

図10 ◎カレーライスを作る作業

WBSを用いたスケジュール作成の際に重要な点は、作業ごとの依存関係を明確にすることです。カレーライスの例で言うと、「1.1.レシピ作成」が遅れれば「1.2.材料の洗い出し」が遅れ、「1.計画」が遅れ、プロジェクト全体の進捗が遅れることにつながります。一方で「1.1.1.インターネットで検索」「1.1.2.雑誌で調査」「1.1.3.母親にヒアリング」の3つは、担当者がそれぞれ異なる場合、依存関係はありません。それぞれが同時並行で進みます。

PMOとして最低限把握すべき進捗状況は、この「依存関係にある作業」の部分です。プロジェクト全体の進捗に影響を与え、時間的に余裕のない一連の作業をクリティカルパスと呼んだりしますが、システム開発の現場では、しばしば「クリティカルパスそのものがよく分からない」という問題が起きます。

クリティカルパスの把握も重要ですが、作業間や組織間で依存関係にある作業を洗い出し、マスタースケジュールとWBSの間をつなぐ進捗レポートをPMOが作成することの方が実践的と言えます。進捗レポートを作る際は、プロジェクト管理ツールや表計算ソフトを使用するよりも、パワーポイントのようなプレゼンテーションツールを使用した方が視覚的で分かりやすいでしょう。

進捗レポートの体裁は、週単位または月単位の進捗状況を1ページのドキュメントとしてまとめます。縦軸に各組織(チームなど)を取り、横軸を時間軸にします。その枠の中で、作業間と組織間で依存関係にあるタスクのみを記述します。PMOがこの資料を作成することで、全体進捗の把握とマネジメントレポートが同時に行えるため、大変効果的です。