プロジェクトを失敗させないヒント61『モチベーションも見える化できる』

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    『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

    『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

    本記事は、プロジェクトを成功させるために必要なノウハウを、数百の支援実績経験をもとに記述した『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』より、 1つずつヒントをご紹介していく企画です。プロジェクトマネジメントについて、何らかの気づきを得るきっかけになれば幸いです。

    当社はプロジェクトマネジメントの知識と経験を有し、皆様のプロジェクトが成功するお手伝いをさせていただいております。 プロジェクトマネジメントに関する疑問や課題がある方、成功への道筋をお探しの方、どうぞお気軽にご連絡ください。
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    ※『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』をPDFまたは電子書籍でダウンロードできます

     


    メンバーのモチベーションという目に見えない問題に対して、PMOならではの役割があります。現場の悩みを引き出しやすい面談の場作りをプロジェクトマネジャーやチームリーダーに助言したり、マネジメント層とメンバーとの橋渡し役として、現場の悩みやモチベーションの状態を見える化したりすることに注力できます。

    一例を挙げましょう。進捗会議の1コマ。いつものように2人のチームリーダーがプロジェクトマネジャーに進捗を報告し始めました。しかし、Bチームリーダーの報告は、かなり曖昧な内容でした。

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    プロジェクトマネジャー:Aチーム、Bチームの進捗状況を報告してください。まずはAチームからお願いします。

    Aチームリーダー:はい。現在、顧客抽出条件に関する質問の回答待ちで、基本設計が2日ほど遅れていますが、先行して詳細設計のうち抽出条件に直接関係のない部分を実施していますので、今週末までに抽出条件の回答がもらえればスケジュールは挽回できます。

    プロジェクトマネジャー:なるほど。では、Bチームはどうですか。

    Bチームリーダー:少し遅れている作業はありますが、まあ、大きな問題はありません。来週にはリカバリーできると思います。
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    Bチームリーダーは覇気がなく、こう答えました。このような報告を聞いた時、プロジェクトをマネジメントする立場として、どんなことを意識すべきでしょうか。Aチームリーダーの報告は非常に具体的で、課題や進捗状況が明確に報告されています。一方、Bチームリーダーの報告は曖昧で、課題や進捗状況が具体化できていません。その点で、Bチームリーダーの報告の仕方はいただけません。しかし、問題はそれだけでしょうか。

    年に数回の面談ではメンタル問題の発見が遅れる

    実は、BチームおよびBチームリーダーはそれ以上の問題を抱えていました。その影響で仕事に対するモチベーションも相当低くなっており、報告の仕方に表れていたようです。PMOとして報告の仕方を注意することも必要ですが、裏に見え隠れする問題やモチベーションの低下に気づくことの方がより重要です。進捗の遅れは定量的に測れますが、メンバーのモチベーションを定量的に測定するのは困難です。そのため一般には、人事評価の面談などを通じてチームリーダーやプロジェクトマネジャーがメンバーのモチベーションを把握し、ケアをしていることが多いと思います。

    ただし、年に数回の面談だけでは、モチベーションの低下を把握する機会が十分とは言えません。面談してみた時には、既にモチベーションの低下どころか、精神的に相当参っていた、という状況も考えられます。それだけに、普段からメンバーのモチベーションをケアしておきたいところです。こういった、非定量的で管理がしにくい問題に対し、PMOは何ができるのでしょうか。

    面談のなかで、メンバーが抱えている問題をチームリーダーやプロジェクトマネジャーが聞き出したいと思っても、実際にはうまくいかないことがあります。リーダーやプロジェクトマネジャーには「人事評価者」としての顔がありますし、少しでも説教じみた態度が出てしまうと、メンバーが相談しにくくなってしまうことがよく起こります。メンバー自身が相談したいと思っていても、いつの間にか気持ちが萎えてしまうこともあるのです。

    これでは、年に数度の機会を十分に生かせず、危険信号を見逃してしまいます。PMOとしては、後からリーダーやプロジェクトマネジャーにヒアリングするなどして、「メンバーが相談しやすい雰囲気の面談だったか」をチェックするとよいでしょう。また、PMOがメンバー役となってリーダー、プロジェクトマネジャーと模擬面談を実施し、面談での態度や面談内容を直接チェックする手もあります。

    明らかにモチベーションが低下していると思われるメンバーに対しては、非公式なヒアリングを実施します。この場合、直接の上司がヒアリングをしてしまうと、そこで話した内容が評価につながるというプレッシャーになり、素直な意見が聞けなくなることがあります。そのため、PMOがヒアリングすると効果的な場合があります。モチベーションが低下しているメンバーを見分けるポイントは、以下の5つです。

    (1)高い作業品質を保っていたメンバーの作業品質が突然落ちた
    (2)残業時間は長いのに作業の進捗がいまいち
    (3)会議での発言が著しく少ない
    (4)上司と会話している時に目を合わせていない
    (5)会話のスピードが以前より遅くなった

    こういったメンバーを見つけた場合には、PMOが上司の代わりにヒアリングをしてみるべきでしょう。

    なるべく短い周期でマイルストーンを設定する

    長期のプロジェクトでは、作業のゴールが見えないことでモチベーションが低下することがあります。その問題を避けるには、スケジュールの立て方に一工夫するとよいでしょう。なるべく短い単位でマイルストーンと目標を設定し、「それが守れたら成功」とする体験を積み重ねるように計画します。短期的な目標が見えていることと成功体験を繰り返すことでメンバーに自信が付き、それがモチベーションの維持・向上につながります。

    メンバーのモチベーション向上で解決できる問題も少なくありません。目に見える部分の問題点がある程度解決されたら、次は人の心という目に見えない部分をケアしてみてください。