プロジェクトを失敗させないヒント76『情報に優先順位を付ける確かなやり方』

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    『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

    『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

    本記事は、プロジェクトを成功させるために必要なノウハウを、数百の支援実績経験をもとに記述した『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』より、 1つずつヒントをご紹介していく企画です。プロジェクトマネジメントについて、何らかの気づきを得るきっかけになれば幸いです。

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    プロジェクト内で鮮度と質の高い情報が流通するようになったら、意思決定を迅速にするため、それぞれの情報を優先順位付けする必要があります。日常的に行っていることですが、情報の種類によって適切な評価基準を設定しているでしょうか。優先順位付けなら、いつもやっているよという人も多いと思いますが、情報の種類によって評価基準が異なります。やり方を間違えると本当に必要な情報を葬ってしまうことになりかねません。

    ところで、プロジェクトで管理する情報とは、誰にとっての情報でしょうか。簡単に言うと、「プロジェクトにおける何らかの意思決定をする人」のための情報です。情報の優先順位付けを始める準備として、その情報が「行動」なのか「事象」なのか、分類しておく必要があります。

    行動とは、「いつまでに何をやらなくてはいけない」といったWBSのタスクや、To Doとしてリストアップされているアクションです。一方、「事象」は出来事です。それが過去に起こったことであれ、今起こっていることであれ、あるいは起こりそうなことであれ、何らかの行動の結果、出来事が表面化して事象になります。

    行動については、それまで認識されておらず、新たに実行が必要なものであれば、WBSやTo Doリストに追加すればよいでしょう。また事象である場合には、共有情報(報告)や課題、リスクとして取り扱えばいいことになります。たまにこれらが混同され、課題やリスクといった事象として管理すべきもののなかに、タスクやTo Doといった行動が混ざっている状態が見受けられます。最初の段階として、それが行動なのか事象なのかを意識して区別する必要があります。もちろん、課題やリスクから発生する行動もありますが、対応プロセスの記録という意味を除いては、それらはWBSやTo Doで管理すべきです。行動と事象を区別できたら、トリアージ(優先順位付け)を始めます。

    「行動」のタグ付け

    行動は、どのように優先順位付けすればよいでしょうか。基本的な考え方はシンプルです。まず、その行動を実行するのがどの組織なのか、またその中の誰が実行するのかによって分類します。通常は実行期限が設定されるものが多いので、期限に応じて優先順位を付けます。

    優先度が同程度だったり、明確な期限がなかったりする場合は、その影響度に応じて優先度を設定します。この場合の影響度とは、「後に続く行動(タスクやTo Do)が、当該行動にどの程度影響を受けるか」「それが1人なのか、チーム全体なのか、プロジェクト全体なのか」といったことです。このように行動の優先順位付けは、設定された「実行期限」と「影響度」に基づいて行います。

    「事象」はさらに細かく分類

    事象についてはどうでしょう。優先順位を考える前に事象を細かく分類してみます(図14)。事象を分類するには様々な方法がありますが、最初にプロジェクトにとって「好ましい出来事」か「好ましくない出来事」かという2軸で分類します。どちらにも分類しにくい事象もありますが、それが好ましくない出来事でなければ、好ましい出来事に分類しましょう。

    image (1)

    次に、それらの情報をQCDへの影響の有無という新たな軸で分類します。この時点で「好ましい/好ましくない出来事」「QCDに対する影響の有無」という2軸でマトリックスを作ることができます。

    これを、さらに時間の概念で分類します。ここでいう時間とは、基本的には「過去」「現在」「未来」ですが、事象に着目し、「完了」「進行中」「予見」という3つに分類します。ここまでで、事象が3次元の立方体で分類されます。これだけでもかなり整理された状態です。それでは実際に優先順位付けを行いタグ付けするには、どのような基準で行えばよいでしょうか。

    「好ましい出来事」のタグ付け

    事象のタグ付けを考える際、好ましい出来事と好ましくない出来事では、考え方が分かれます。好ましい出来事の情報は、QCDに影響があるかないかにかかわらず、「事象の対応が完了しているか否か」で分類が分かれます。完了していればそれは成功事例であり、未完了のものは共有すべき情報となります。

    どちらもプロジェクトにとってプラスの材料ですから、過去のことであれば成功事例として今後に生かせますし、これから起こりそう、または現在進行していることであれば、メンバーの士気を高めるために利用できます。リーダーはタイミングよく情報を積極的、かつ効果的に発信し、プロジェクトの活性化を図ります。

    次に、好ましくない出来事の情報のタグ付けを見ていきます。

    「リスク」のタグ付け

    リスクとは、狭義には「QCDへの影響」として予見されることです。しかし本当の意味でのリスクはこれだけではありません。QCDに直接影響がない現在進行中のものや、将来発生が予見される事象から、影響が発生する可能性もあります。

    あるプロジェクトメンバーの身内が病気で入院したとします。直接そのメンバーが看病で休暇を取ることはないような場合でも、毎週末にお見舞いに行っていれば、平日の疲労が回復せず、倒れてしまうかもしれません。このような身内の入院という事象は直ちに影響はないかもしれませんが、将来的な品質低下や納期遅延につながる可能性があります。

    間接的にQCDに影響が及びそうな、現在進行中の事象や予見される事象も、広い意味でリスクと捉えた方がよいでしょう。ただ、その場合には、対象となる事象とそこから発生する可能性があるリスクの両方を捉える必要があります。そして、元となる事象は、リスクの発生可能性を示唆するものとして位置付けます。

    先の例で言えば、リスクは「納期遅延」であり、発生可能性を補足する情報として、「Aチームの主要メンバーであるYさんの身内が入院し、Yさんが看病しているため体調を崩し、病気で欠勤する可能性がある」となります。

    リスクはセオリー通り、「発生可能性」と「影響度」で重要性を判断するとよいでしょう。この2つを掛け合わせたものを「重要度」としてタグ付けします。発生可能性は「どの程度その事象が発生し得るのか」という観点で、また影響度は「影響範囲が担当者レベルなのか、チーム全体に及ぶのか、プロジェクト全体または企業全体に及ぶのか」といった点を基準に判断します。

    「課題」のタグ付け

    QCDに影響があり、現在進行中の事象は、「課題」に位置付けられます。進行中の事象は、現時点で最も注目度が高く、かつプロジェクトに即座に影響が及びます。優先順位付けに当たっては「緊急度」と「影響度」で判定するとよいでしょう。

    緊急度については、その事象が発生しているタスクがクリティカルパス上にあるか否か、完了期限まで残り少ないか超過しているか、といった点を基準に判断します。一方、影響度は影響を及ぼすプロジェクト階層を基準に考えるとよいでしょう。

    「共有情報(教訓)」のタグ付け

    既に対応が完了した事象は、その情報を入手したところで事象自体に影響を及ぼすことはありません。しかし、今後類似の事象が発生した場合、教訓として生かせるかもしれません。そのためには事象と対応内容を重要度に従ってランク付けし、教訓として共有しておく必要があります。

    共有情報(教訓)の重要度については、類似事象の発生可能性と影響度を判断し、それらを掛け合わせた値を重要度としてタグ付けすることで、後の判断に役立てます。

    共有情報を管理するうえで重要なのは、事象の内容もさることながら、「どのように対応し、どうなったか」というプロセスと結果です。これらが後から分かるように記録しておくことが重要です。さもないと、単に発生したという事実のみになってしまい、教訓として生かせません。

    最後に、情報を伝達する際には、どのような目的でそれを行っているのかを意識することで、内容がより明確になります。言い換えると、相手にどのような行動を取ってもらいたいかを意識しながら、情報を伝達する必要があります。

    単なる情報共有として状況を相手に理解してもらいたいのか、それとも相手に何らかの判断やアクションを取ってもらいたいのか。これらを意識することで、伝え方やポイント、内容が明確になり、相手により伝わりやすくなります。