プロジェクトを失敗させないヒント80『たかが議事録、されど議事録』

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    『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

    『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

    本記事は、プロジェクトを成功させるために必要なノウハウを、数百の支援実績経験をもとに記述した『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』より、 1つずつヒントをご紹介していく企画です。プロジェクトマネジメントについて、何らかの気づきを得るきっかけになれば幸いです。

    当社はプロジェクトマネジメントの知識と経験を有し、皆様のプロジェクトが成功するお手伝いをさせていただいております。 プロジェクトマネジメントに関する疑問や課題がある方、成功への道筋をお探しの方、どうぞお気軽にご連絡ください。
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    会議の進行通りに発言を記録していくような議事録は、無駄だと言いたいです。それぞれの会議には、それぞれの目的があります。その目的達成を助ける議事録を作れなければ、議事録の作成時間は無駄になります。

    PMOは会議のファシリテートと同じぐらい、議事録を取る機会(仕事)が多く、私も議事録の作成をどのように効率化しようかと色々悩みました。特に「どの程度まで記録すればよいのか」「何を言っているのか分からず、議事録が取れない」「議事録にしたくても、何も結論が出ていない」など、苦労した経験があります。PMOとして議事録にどのように向き合い、どのような議事録を作ればよいか考えてみます。

    会議によって議事録の目的は違う

    議事録を取る目的は何でしょう。後から「言った、言わない」という問題を防ぐためでしょうか。それとも、決定事項を関係者に周知するためでしょうか。会議の決定事項を再確認する正式ドキュメントとするためでしょうか。あるいは、会議で出た課題やリスクを記録し、次のアクションを促すためでしょうか。

    全て正しいですが、会議によって議事録のあるべき姿は変わってきます。「会議の目的」が違うからです。ステアリングコミッティーのようなプロジェクトの重要事項を決める会議と、プロジェクト内での週次進捗会議、突発的な問題が起こった場合の対策会議では、それぞれ会議の目的が異なります。

    議事録は、会議の目的に沿うものであるべきです。議事の進行通りに、機械的に記録するような議事録ではダメです。「この会議の目的からして、どのような議事録を作成すれば目的達成の助けになるか」という視点で議事録を考えると、残す情報のポイントがおのずと見えてきます。

    先に挙げた例で言うと、ステアリングコミッティーの議事録は、「何が決定されたのか」が最重要であり、補足情報として「誰が、どのような意見や懸念を持っている」という情報をまとめていきます。プロジェクト内での週次進捗会議なら、「プロジェクトの進捗を阻害している課題は何か」が最重要です。補足情報として「課題」「リスク」「対応方針」の情報を議事録にまとめます。突発的な問題が起こった時の対策会議の場合、「問題に対する原因の究明とその解決策」が最重要になります。補足情報として「解決のためのアクションプラン」や「解決のための役割分担」をまとめるべきでしょう。

    このように、それぞれの会議の目的を意識することで、議事録に残すべきポイントを抽出できるようになります。全ての議事録に言えることは、会議の目的を達成するための「過程の議事」はさほど重要ではないという点です。ただし、公官庁や大企業では「関係者を集めて問題を共有した」という行為そのものが目的の会議になることも少なくありません。このような場合は、問題を共有した過程を記録すべきです。

    議事録を見た後に何を期待するか

    ドキュメントを作成する時の鉄則は、「読む側の立場になって考える」ですが、議事録についても同じです。議事録を送るメンバー自身が議事録を読み直し、その後に自分が何をするべきか、はっきりと記されていることが重要です。

    例えば、議事内容から「課題」「To Do」「決定事項」「リスク」などを拾い上げ、担当者や期限を議事録の最初に明記しましょう。議事録は、会議の参加メンバーによる合意事項を記載したものです。議事録に明記されたアクションプランや担当者名は、メンバーにアクションを促すきっかけになります。さらに定期的な会議では、前回の議事録に記された「持ち帰り事項」を次の会議の始めに確認すれば、必要なアクションが取られたかをチェックできます。

    このように議事録には、議事録を見た関係者に何を期待するかによって、書き方や運営方法を工夫できるのです。うまく運用すれば「みんなに見られる議事録」「アクションに結び付く議事録」にすることができます。

    具体的に議事録の書き方を考えてみましょう。みなさんは全ての会議に同じようなレベルで議事録を取っていませんか。私の場合、会議の内容やレベルに応じて、議事録への記載レベルを使い分けています。

    突発的な問題が起こった場合の対策会議に関する議事録は、個条書きレベルのメモで「本質的な原因」と「誰が、いつ、何をする」のみを記載します。会議中にノートパソコンで議事録を作成し、会議が終わったら、その場ですぐ関係者に送ってしまいます。ノートパソコンがない場合は、ホワイトボードにまとめた事項をスマートフォンのカメラで撮り、それを議事録として展開します。なぜなら、「問題をいかに早く解決するか」が重要だからです。もしかすると、議事録というよりは、単なる「議事のメモ」に近いかもしれません。

    プロジェクトの週次進捗会議などでは、ポイントとなる議事を記載し、そこから「課題」「To Do」「決定事項」「リスク」を抽出し、一度他のPMOメンバーの確認を得てから全体に展開しています。こうする理由は、現在のプロジェクト上の問題で見落としがないかを確認したいからです。これら2つの議事録にかける仕事量は違いますが、有効性は2つとも同じです。

    一般に、ICレコーダーで会議の内容を全て録音し、一言一句漏らさず一生懸命に議事録を取り、どんなにきれいに体裁を整えたとしても、一度作成してしまったら、その後見向きもされないのが議事録の実態です。ほとんどの議事録は有効に活用されていません。

    どんなに立派な議事録を何百枚作ろうとも、それでプロジェクトが成功するわけではありません。それよりもPMOは「この会議で議事録を取る意味は何だろうか」と考えて、そこに過剰な工数をかけていないかを点検してみてください。