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プロジェクトを失敗させないヒント92『文化や価値観の違いの楽しみ方』
『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

本記事は、プロジェクトを成功させるために必要なノウハウを、数百の支援実績経験をもとに記述した『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』より、 1つずつヒントをご紹介していく企画です。プロジェクトマネジメントについて、何らかの気づきを得るきっかけになれば幸いです。
当社はプロジェクトマネジメントの知識と経験を有し、皆様のプロジェクトが成功するお手伝いをさせていただいております。 プロジェクトマネジメントに関する疑問や課題がある方、成功への道筋をお探しの方、どうぞお気軽にご連絡ください。
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※『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』をPDFまたは電子書籍でダウンロードできます
グローバルプロジェクトでは、海外メンバーとの価値観の違いでストレスをため込むことがしばしばあり、放っておくと深刻なリスクに直面します。プロジェクトの初期フェーズで、グローバルPMOがステークホルダー管理プロセスを通じた巻き込みと定期的なコミュニケーションの場を用意し、海外メンバーとリスクを共有しながら一緒に対処できる枠組みを作っていきます。というのも、グローバルプロジェクトでは、国内プロジェクトでは見られない様々な文化や価値観の違いに遭遇します。
グローバルPMO:Can you update the status of the test?(テストの実施状況をアップデートしてもらえますか)
海外拠点のメンバー:It’s OK, OK. No problem.(問題ありませんよ)
これでは、正確な進捗が分かりません。海外拠点への新業務やシステム展開でコロケーションができない場合は、なおさら心配になります。加えて、言葉や単語の理解が違う、いわゆる語彙の違いに基づくリスクもあります。
海外拠点のメンバー:What do you mean by “Process”? “Manufacturing process”?(「プロセス」とはどんな意味ですか。「製造過程」のことですか?)
日本で当たり前に使われる言葉の意味が、海外でもそのまま通用するとは限りません。放置していると、丁寧に説明したと思っていた要求書や仕様書の内容の誤解が後工程まで解消されず、深刻な事態になります。
グローバルPMO:As described in our master plan, the system-down for the go-live will be scheduled in the beginning of November.(マスタープランにある通り、本稼働に伴うシステムダウンは11月初旬を予定しています)
海外拠点のマネジャー:Why do we need the system migration and shut down before Christmas time? We need an approval from the CEO.(なぜクリスマスの前にシャットダウンしてシステム移行する必要があるのですか? それにはCEOの承認が必要です)
日本と違い、クリスマス商戦が数カ月前から始まる地域があり、その期間の業務上の変更は経営的にNGの場合があります。全世界を対象としたグローバルプロジェクトでは、例えば中国の春節も考慮する必要があるかもしれません。
日本にはない商習慣とプロジェクトの重要マイルストーンとの関連を見逃すと、プロジェクトの後半にスケジュール変更が発生し、全世界の拠点の業務や、さらには商品売り上げなどの経営指標に影響を及ぼす場合があります。仕事の価値観や雇用状況など、文化の違いがプロジェクトに大きな影響を与えることがあります。
グローバルPMO:I would like to talk with the PMO person in your area.(そちらにいるPMOと話をしたいのですが)
海外拠点のマネジャー:Oh, he already left this company.(いやあ、彼はもう会社を辞めたよ)
海外では人の異動や入退社が激しい地域があり、せっかくの情報共有が台なしになってしまいます。
一般に、グローバルプロジェクトのリスクカテゴリーは「組織的」「技術的」「外的」の3つに分類されます。組織的リスクには、拠点が違うことによる文化や商習慣の違いに基づくリスクが含まれます。技術的リスクには、プロジェクトマネジメント・システムやコミュニケーションツールの不備が含まれます。外的リスクには、法規制や通貨の違い、治安など、プロジェクトマネジャーとPMOが単独に対処できない要因による懸案事項が含まれます。
グローバルプロジェクトでは、組織的リスクをできるだけプロジェクトの初期段階で認識し、対策を立てて実行しておくことが重要です。システムの受け入れテスト中に、文化による品質の違いが表面化すると、当初のゴールや計画を満たすためのリカバリーは困難になるからです。リスクテンプレート(過去の失敗事例と対策)を用意しておき、グローバルプロジェクトの初期フェーズにおけるチェックリストとするのも有効でしょう。
リスクに一緒に取り組む仲間作り
複数の国と地域が関わり、規模が大きいプロジェクトでは、日本人のプロジェクトマネジャーが1人で対応するのは難しいもの。多拠点で多国籍のメンバーとともに仮想的なチームを作り、上記リスクの認識を合わせながら一丸となって取り組むことが有効です。そのようなチームはどのように作っていくのでしょうか。
グローバルプロジェクトの初期段階で有効な取り組みの1つは、ステークホルダー管理プロセスを通じた巻き込みです。このプロセスを通じ、プロジェクトに関わる「人」と必要な「コミュニケーション手法」を定義、実行していきます。PMI(プロジェクトマネジメント協会)が出している『プログラムマネジメント標準(第2版)』によると、ステークホルダー管理は4つのプロセスから構成されます。
(1)ステークホルダー管理のプランニング
(2)ステークホルダー認識
(3)ステークホルダー関与(Engagement)
(4)期待値のマネジメント
(2)を通じ、利害関係者がプロジェクトに対してどのような興味や心配を持っているかを初期仮説としてまとめ、主要ステークホルダーとその後のプロセスの優先順位をプロジェクトマネジャーが協議し、管理計画にまとめていきます。
そしてグローバルプロジェクトでは(3)が肝になってくるはずです。「Engagement」という単語から結婚指輪を思い浮かべそうですが、その意味ではありません。外務省などの国際関連機関は「持続的関与」と訳しています。定例ミーティングやリスクワークショップを通じて定期的に関わる場(セッション)を用意し、プロジェクトのゴールや狙いを明確に説明し、議論することで、主要ステークホルダーを巻き込んでいきます。
グローバルPMOとしては、彼らとの信頼関係を大事にしましょう。注意点は、一方的にならないこと。プロジェクトオーナーやマネジャーの意向を正確に伝え、プロジェクト検証やスコープ定義書を通じて質疑応答を定期的に実施するべきです。
質問が全くないのは、無関心か、まだ巻き込めていない可能性が高いです。何でも言い合えるコミュニケーションとそのマネジメントが、一緒にリスク対応する仲間作りのキーポイントといえます。
1回目の関与を通じ、ステークホルダーの興味や心配事への初期仮説を検証します。プロジェクトのゴールとステークホルダーの期待にギャップがあれば、(4)の期待値マネジメントを通じて、ギャップを埋めていきます。
(2)~(4)を定期的に回すことでコミュニケーション密度が高まり、変動性リスクの顕在化を早めに検知できます。1~2サイクル目のEngagementセッション後には、海外拠点側にいるPMO的な担当者との信頼関係が生まれてくるはずです。全世界の拠点にいる彼らが本社を訪問する時は積極的に会いに行き、対面のミーティングを持ちましょう。