プロジェクトを失敗させないヒント93『育成は愛のつぶやきとブレない軸で』

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    『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

    『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

    本記事は、プロジェクトを成功させるために必要なノウハウを、数百の支援実績経験をもとに記述した『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』より、 1つずつヒントをご紹介していく企画です。プロジェクトマネジメントについて、何らかの気づきを得るきっかけになれば幸いです。

    当社はプロジェクトマネジメントの知識と経験を有し、皆様のプロジェクトが成功するお手伝いをさせていただいております。 プロジェクトマネジメントに関する疑問や課題がある方、成功への道筋をお探しの方、どうぞお気軽にご連絡ください。
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    ※『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』をPDFまたは電子書籍でダウンロードできます

     


    プロジェクトマネジメントの人材育成では、上司から部下にどんなメッセージを伝えていけばよいでしょうか。決してブレることのない行動原則を繰り返し伝え、自発的な行動を促すための「愛のつぶやき」をしつつ、「見守っているよ」というメッセージを送り続けることでしょう。根底にあるのは信頼関係にほかなりません。

    私はPMOのリーダーとして、初めて付く部下には、最初に必ずPMOの目的や存在意義を教え込みます。伝えるポイントは3つあります。

    1つめは、「PMOの一番の役割はプロジェクトメンバーが気持ちよく作業できる環境を作ること」。PMOメンバーとしての行動原則の1つです。2つめは、「PMOの仕事はWBSに全て記載されているわけではなく、自ら問題を探し出して解決していくことも仕事だ」ということ。3つめは、特にコンサルタント経験者に対して言うのですが、「PMOは組織としての機能であり、個人技ではない」ということです。

    次に「このプロジェクトを通して、PMOとして何をどこまでできるようになりたいか」を部下と納得いくまで話し合います。「進捗会議を独力でファシリテートできるようになる」とか、「プロジェクトのリスク管理について、リスクの洗い出しから予防策や対応策の立案、モニタリングまで、関係者を巻き込みながら推進できるようになる」といった具体的な目標を確認します。

    「プロジェクトの目的」という行動原則を問う

    PMOメンバーとしての最初の指導は上記のようなことですが、実際に部下がPMOとしての業務をある程度回せるようになったら、次はプロジェクトの目的を徹底的に意識させます。様々なタイミングで、「このプロジェクトの目的は何だっけ」とメンバーに問いかけるのです。

    なぜかというと、時に管理の手段が目的化してしまい、プロジェクトの目的から外れてしまう事態が起こり得るからです。そんな時、「このプロジェクトの目的は何だっけ」と問いかけ、今のやり方や成果物が本当にプロジェクトの目的達成に役立つのかを意識させるようにしています。

    繰り返し聞かされると、PMOメンバーはプロジェクトの目的と自らの作業を常に照らし合わせ、最適な選択をできるようになっていきます。常にプロジェクトの目的達成(成功)を目指すのも、PMOメンバーとしての行動原則の1つと言えます。

    プロジェクトマネジメント人材の育成は、どうしてもOJT(職場内訓練)が基本になります。その際に私が気を付けているのは、次の3つです。

    (1)マネジメントスタイルを押し付けない

    (2)我慢して見守る。多少失敗してもやらせる

    (3)部下と定期的に認識合わせをする

     

    (1)は、自分の成功体験を押し付けず、できるだけメンバーのやり方を尊重することです。「マネジメントのスタイルに画一的な正解はない」というのが私の考えです。従って、彼や彼女なりのマネジメントの仕方を身に付けられるよう、サポート役に徹します。何か問題が起こった時でも、「私たちがその状況の時は、こうやって解決した」と、あくまで自分の経験を語るだけのスタンスを心がけます。

    (2)はPMOだけの話ではありませんが、やはり重要です。一度任せたら、多少危なかしくても口出しせずに見守るのです。私が駆け出しの頃、上司から箸の上げ下ろしまで口出しされ、とてもやりづらい経験をしたことがあります。これでは部下は伸びません。そうではなく、多少失敗しても、失敗から何かを学ばせるぐらいの心持ちで部下を見守り、成長を促すのが部下にとっての一番の栄養になります(とはいえ、我慢できずについ口を出してしまい、後悔することが今でもありますが)。

    (3)は、(2)と関係があります。私には、多少失敗したとしても部下に経験を積んでもらいたいという思いがあります。しかし、部下からすれば「自分がこんなに困っているのに、上司は何も助けてくれない」というふうに不満を抱いているかもしれません。

    そのような気持ちにならないように、部下と定期的な認識合わせをするのです。「助けてやりたいが、あなたの教育のためにわざと突き放すこともある。本当にダメだと思ったら全力で助けるから、その時は遠慮なく頼ってくれ」と定期的に伝えます。こうすることで「独力でできるところまでは頑張ってみよう」というモチベーションを持って仕事に打ち込んでもらえると考えています。

    愛のつぶやき大作戦を決行

    さて、我慢して見守ると言いましたが、重要な業務など決して失敗してはいけない場面にも遭遇します。あと少し工夫すれば成功できるという場面もあるでしょう。そんな時によく使うのは、愛のつぶやき大作戦です。

    これは元プロ野球チーム監督である野村克也氏の「ぼやき」に似ています。わざと本人に聞こえるように独り言を言って、気づきを与える作戦です。「このチームからの報告ってウソが多いよな。コミュニケーションが取れているのかね」とか、「最近なぜ、この機能の不具合がこんなに多いんだろう」といった具合です。

    最初は「よくぶつぶつ言うやつだな」と部下に思われるだけかもしれません。しかし、しばらくすると独り言が遠回しなアドバイスなのだと気づくようになります。

    まだまだ私も、PMOメンバーの育成について勉強不足なところがあります。部下育成を通じて、実は自分の方が部下に教えてもらったり、気づきをもらったりすることがたくさんあります。このようにお互いに学ぶことができる関係になるには、部下の考えを一度は素直に受け入れることが重要です。それには、普段からの信頼関係が不可欠なのです。

    もちろん、部下の意見を鵜呑みにするのではなく、部下がより高い視点から物事を見られるように上司はサポートすべきです。そうした議論のなかでは、PMOの一番の役割はプロジェクトメンバーが気持ちよく作業をできる環境を作ることだといった「ブレない軸」が必要不可欠です。上司は自分のブレない軸を持っていなければなりません。