プロジェクトを失敗させないヒント97『新任PMOが悩む立ち位置 4』

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    『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

    『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

    本記事は、プロジェクトを成功させるために必要なノウハウを、数百の支援実績経験をもとに記述した『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』より、 1つずつヒントをご紹介していく企画です。プロジェクトマネジメントについて、何らかの気づきを得るきっかけになれば幸いです。

    当社はプロジェクトマネジメントの知識と経験を有し、皆様のプロジェクトが成功するお手伝いをさせていただいております。 プロジェクトマネジメントに関する疑問や課題がある方、成功への道筋をお探しの方、どうぞお気軽にご連絡ください。
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    実際にPMOの仕事を初体験した人たちへのアンケート結果を基に、新任PMOが身に付けておくべきことを解き明かしていきましょう。これまでどのような経験を積んでPMOになったのかというキャリアが、4つの失敗パターンにある程度関係しているようです。

    食べ過ぎ消化不良型はプログラマーやSEからPMOになった人に多く見られます。なぜなら、マネジメントや管理、PMOというものに対しての理解や経験が不足しているため、手当たり次第に自分のタスクとして拾ってきてしまう傾向があるからです。同じく灯台下暗し型もプログラマーやSEからPMOになった人に多く見られます。WBSや作成すべき決まった成果物(設計書やソースコードなど)がある状況での仕事に慣れてしまっているため、自分たちが計画を作ることや、WBSにはないすき間の問題を発見するという経験が少ないためではないかと思われます。

    タコつぼ型は、プロジェクトマネジャーの経験者や、ラインのマネジャーなど管理職経験者によく見受けられます。自分の作業範囲を決めて、その中で成果を出していくことに慣れてしまっているためでしょう。個人としての権限を持って仕事をしていたため、権限はあまりないけれどプロジェクトを推進しなければならないというPMOの特性に慣れるのに時間がかかります。

    自己未完結型は、前職がコンサルタント系だった人に多く見られる傾向があります。個人技に優れているため、今までチームとして成果を出す活動が少なかったのでしょう。PMOという職種になっても、コンサルタント時代と同じように個人技で乗り切れると考え、迷っても誰にも頼らず、相談せずに間違った方向へ進み、最後にお客様に文句を言われるという典型的なパターンがあります。

    PMOとしての組織マネジメント力

    「食べ過ぎ消化不良型」「タコつぼ型」「自己未完結型」には、PMOとしての組織力を生かして業務を遂行していく、というマネジメント力が必要になります。簡単に言えば、PMO内での役割分担になります。PMOは組織として機能しなければならないということです。PMOは時に相反する問題の間で、うまくバランスを取っていくことが求められます(図20)。

    バランスを1人で取っていこうとするのは、大変難易度が高いことです。1人ではなく、PMOの組織としてうまく機能分担、例えば、Aさんは状況の見える化(現在)、Bさんは次のフェーズの準備(未来)をしながら作業を進めていくのが効果的です。当然、コスト的にPMOが1人しかいないプロジェクトもあると思います。そういう現場には、プロジェクトマネジャーやプロジェクトリーダーと仮想的にPMO組織を作り、プロジェクトの管理チームとして対応してくことが重要になります。

    灯台下暗し型に当てはまる人が気にしてほしいのは、曖昧性を受け入れて対処していくという視点です。ポイントは3つです。

    (1)日々変わる状況に応じて、「今何を一番に実行すべきか」を自問自答できる力

    (2)自分で問題を見つけた時に適切な人にディスパッチするコミュニケーション力

    (3)完璧に計画してから進むのではなく、計画しながら進める推進力図20

    PMOとして持っておきたい「政治を見極める力」

    タコつぼ型と自己未完結型に当てはまる人が身に付けるとよいスキルは、政治力(言い換えると人間力)です。要点は3つです。

    (1)人の立場やポジション、価値観を理解して、その人に合わせてアプローチを行い、プロジェクトの成功を導く力。感情を害さず、気持ちよく仕事をしてもらうための力です。管理屋が陥りがちな「みんなに同じ管理手法を強要する」といったことはせず、柔軟に対応できるスキルが大切です。

    (2)PMOを組織として機能させるための政治力(公式パワー、非公式パワー)。PMOが業務を遂行するために必要な権限を自ら調整できる力です。

    (3)曖昧ななかを進んでいくための協力を得る推進力。みんな不安ななか、関係者を説得して進めていくコミュニケーションの能力は不可欠です。プロジェクトが混迷していて、みんなが行き先を失い迷っている時に、進むべき道を照らす、または照らすことができるようにプロジェクトマネジャーをサポートする突破力を身に付けておきたいものです。

    さて、実際に新任PMOに任命された担当者はどのような悩みにぶつかり、克服してきたのでしょうか。新任PMOへのアンケートを基に、3つの典型例を紹介します。

    実例1◆プロジェクトマネジャーが何を望んでいるか分からない

    <悩み>

    プロジェクトマネジャーがどのような情報を欲しがっているのか、どのような動きを期待しているのかが分からなかった。

    <解決の過程>

    「もし自分がこのプロジェクトマネジャーだったら」という視点で考えるようにした。明らかに経験不足だったが、懸命に考え抜いて出した答えは、プロジェクトマネジャーの求めるものだった。

    <考察>

    この人は、着任して最初の3カ月ぐらい、「プロジェクトマネジャーに必要とされるPMO像」がつかめず苦労していました。その問題に気づくまでは典型的な食べ過ぎ消化不良型で、手当たり次第に何でも仕事をしていた人です。

    前のキャリアはSEだったので、プロジェクトマネジャーの立場になるという視点の転換(言い換えると、成功に向けて一番必要なものは何かと考える視点への転換)に苦しみました。しかし、プロジェクトマネジャーだったら何が必要だろうと懸命に考えることで、困難を切り抜けたのです。

    SEから、マネジメント経験を経ずにいきなりPMOにキャリアチェンジした場合、視点を1レベル上げていくことに相当苦労するのが実情です。有識者はその視点から「私たちがプロジェクトマネジャーだったら、このように考える」といった意見を伝えることが有効なアドバイスになります。

    実例2◆管理することと生産性を上げることのジレンマ

    <悩み>

    決められたルールを決められた通りに運用し、逸脱した人にはその理由にかかわらず、ルールの徹底を促した。現場で一方的に強制すると、逆にメンバーのモチベーションと生産性を下げてしまい、このジレンマに悩んだ。

    <解決の過程>

     現場の状況をよく見て、極端に言えば1人ひとりに合うようなルールの改善、「あそび」の部分を持たせることが必要だと分かった。今は人によってアプローチを変えている。もちろん基本のルールを決めておくことは大前提。

    <考察>

     これも現場ではよくある悩みです。PMOとして、メンバー個人の仕事の仕方やプロジェクトに対する思い、性格を知ることがとても重要です。なぜなら、プロジェクト全体の多様性をコントロールし、生産性を高めていくには、各個人が気持ちよく仕事ができる状況にあることが必要だからです。事例にもあるように、とても難しいですが、画一的な管理ではなく、メンバーが生き生きと仕事ができるマネジメントを心がけていきたいものです。

    実例3◆PMOとしてどこまで踏み込んでよいのか分からない

    <悩み>

     「自分の作業は終了したので、帰ります」というスタンスだと、「このPMOはドライな感じがする」と思われ、かといって「プロジェクト成功のために何でもやります」だと、タスクがあふれてしまって元も子もない状態に陥った。

    <解決の過程>

    お客様の要求レベルを確認し、それをちょっと上回るくらいのさじ加減が必要だと思い、細目にわたりお客様のキーパーソンと「期待値合わせ」を実施した。

    <考察>

    この悩みも新任PMOに付いて回ります。この人は仕事をしていくなかで、自分なりの踏み込み具合のスタンスを固めていきました。これはクライアントが変われば、当然、要求レベルも変わってきますので、一概にこのやり方で全て問題が解決できるわけではありません。ただ、日々お客様と期待値を合わせていくのは、非定型的な作業が多いPMOにとっては重要なことです。

     

    PMOという職種はまだまだ発展途上であり、人によって様々なPMO像があります。PMOとは何かを定義することも重要かもしれませんが、PMOが入ることでメンバーが「自分のやるべきことに集中できる環境ができて、仕事がはかどっている」と実感してもらうことがより重要だと考えます。