『[ヒント38]見える化で得た情報の「関連」を見える化する』『[ヒント39]「見える化ツリー」を作る3つのステップ』では、見える化で得た複数の情報と指標の間にある関連をツリー化する効果とツリー化の検討ステップを紹介しました。ここで注意点があります。
見える化で得た複数の情報と指標の関連をツリー化する作業は、基本的にプロジェクトマネジャーやPMOの勘や経験に基づいています。これらを否定するつもりはなく、むしろ勘と経験は重要な要素と考えていますが、実際のデータと付き合わせることで、見える化ツリーをブラッシュアップできるはずです。また、実際のデータを分析する過程で、新たな気づきを得られるかもしれません。
ここで、ツリー化した情報と指標の関連性を実際のデータで検証する方法を述べます。データ量が多いほど分析結果の精度は高くなりますが、実際にはそれほどたくさんのデータを集められるわけではありません。その事情を踏まえつつ、小さなプロジェクトでも実践できる簡便な方法を紹介しておきます。
ツリー化された情報と指標の関連を検証するには、検証を行うためのデータをできるだけ多く蓄積する必要があります。それを基に、統計的な相関分析を行います。データのサンプル数が少ないと、関連性を分析してもなかなか有意な結果は得られません。
データ分析に当たって、サンプル数は多いほどいいですが、実際に集めるのは難しいものです。特にプロジェクトや各フェーズの初期には、そうです。最も基本的な進捗率のデータを集めるとしましょう。大抵は週次で集計するので、サンプルを50個集めようと思うと、1年かかります。多くのプロジェクトでは既に終わってしまっているか、フェーズが変わっていることでしょう。実際のデータ分析は、週次データを月次で検証するといったサイクルになると思われます。
データ蓄積のために日次でデータ収集を行う手もありますが、管理コストが増えて、やりすぎの感があります。月次でデータ分析を行う場合、データを集め出した当初はデータがあまりない状態です。それでも、簡便なデータ検証を行い、継続的にデータを蓄積・分析していくことで、徐々に有効な情報ができてきます。
データを客観的に分析することは有用ですが、データのサンプル数が少ない場合は、これまでの勘と経験に基づいて主観的に関連を検証してみてください。主観的に見てみると、データ分析では明確な関連性が見られなかった場合でも、何かの気づきが得られるかもしれません。サンプル数が少ないからなのか、本当に関連性がないのかが、何となく判別できます。データ分析という客観的な手法とプロジェクトマネジャーとPMOの勘と経験を組み合わせることで、相互補完できると考えてください。
先の見える化ツリーで考えてみましょう。タスク進捗率が低下している状況で、影響する指標である「作業生産性」や「レビュー生産性」は悪化していないように見受けられたとします。データ分析上は「タスク進捗率」と「作業生産性」「レビュー生産性」は相関関係を示していない状態ですが、主観的には直結していると思われます。
この矛盾を解消すべく、現場に確認してみたところ、「レビュー後の修正対応工数が大きくなっていて、タスクを完了ステータスにできない」ということが分かりました。何のことはない、管理する指標の分析がイマイチだったというオチになるのですが、指標を検証していくことでプロジェクト状況を把握する気づきが得られたわけです。