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プロジェクトを失敗させないヒント52『リスク管理がうまくいかない7つの理由』(後編)
『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

本記事は、プロジェクトを成功させるために必要なノウハウを、数百の支援実績経験をもとに記述した『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』より、 1つずつヒントをご紹介していく企画です。プロジェクトマネジメントについて、何らかの気づきを得るきっかけになれば幸いです。
当社はプロジェクトマネジメントの知識と経験を有し、皆様のプロジェクトが成功するお手伝いをさせていただいております。 プロジェクトマネジメントに関する疑問や課題がある方、成功への道筋をお探しの方、どうぞお気軽にご連絡ください。
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※『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』をPDFまたは電子書籍でダウンロードできます
リスク管理の重要性については、頭では分かっていながら、現場のプロジェクトでは真剣に取り組めていないのが実情です。リスク管理がなぜ現場でまじめに取り組まれないのか、心理的な理由を考えてみましょう。今回は、ヒント51『リスク管理がうまくいかない7つの理由』(前編)の続き3つをご紹介します。
(理由5)メンバーにとっては余計な負担
一般にリスク管理は、事前にリスクを洗い出し、そのリスクに対する予防策を考えます。しかし、そのリスクの予防策を実施するメンバーにとっては、新しいタスク(負担)となってしまいます。しかも、リスク予防のために実施するタスクは、プロジェクトに必要な成果物に直結しません。成果が見えづらいという特徴もあります。そのため、リスク予防策の実施を任された担当者は、目の前のアウトプットがはっきりしている作業を優先しがちになります。
リスク予防策はそれ自体実施しなくても、目に見えて進捗が遅れるといった実害がありません。「時間がある時に実施しよう」という誘惑に負けてしまいます。普通、リスク対応は「緊急ではないけれど、重要な事項」に分類されます。担当者が緊急ではなく、重要でもない事項と勝手に重要度をすり替えてしまわないよう、リスクに対する予防策の重要性、すなわち「リスクの予防策を実施することは重要なタスクなんだ」という意識をしっかりと持ってもらう必要があります。
(理由6)本当にやる意味があるか確信が持てない
リスク管理を推進するPMOの立場でリスク管理を見てみると、目の前の作業に追われているメンバーに向かって、「リスク対応の計画を立ててください」とか、「リスク対応が進んでいないので計画通り実施してください」とはなかなか強く言えません。私もリスク管理者として「この忙しい時に、リスク対応なんかやるべきなのか」と自信が揺らぐ経験を何回もしています。
しかし、思い返してみれば、「あの時リスク対応をしていれば、トータルでスケジュールが遅れずに済んだし、余分なコストを抑えられた」と後悔することがあります。
例えば、「要件定義フェーズで確定した要件が設計フェーズで変わる危険性がある」というリスクがありました。その予防策として、「要件定義フェーズの最後に全体の要件を横串で確認する全体確認会を開催し、要件の漏れを防ごう」という対策を計画したのです。しかし、要件定義フェーズが遅れ、全体確認会を開催する時間的余裕がなくなり、計画した予防策は実施しませんでした。
結果はどうだったでしょうか。案の定、設計フェーズで機能間の連携が取れていないことが発覚し、設計フェーズが3カ月延期になりました。リスク予防策を実施するための1週間を惜しんだばかりに、3カ月の遅延を招いてしまったのです。リスク予防策を実施していたとしても、それなりの不整合が発生したかもしれませんが、それでも3カ月遅れることはなかったはずです。
(理由7)作りっぱなしの最たるもの
重要な資料でありながら、リスク管理表ほど、一度作ってしまうと見向きもされない資料はないかもしれません。理由は、リスク管理表を作った経験がある人なら、すぐに思い当たります。作ったことで満足してしまうからです。
本来のリスク管理は、リスクを抑えるために予防策を推進していくことが重要です。しかし、その目的はあっという間に忘れ去られ、リスク管理の第一歩に過ぎない、リスク管理表を作ることが目的になってしまいがちです。
リスク管理表をレビューする上位者も、管理表に記載されているリスクや予防策のその後をモニタリングしている人は、ほとんどいません。あんなに一生懸命リスクを洗い出し、予防策を考えて一覧にしたのに、それを取りまとめた瞬間に満足してしまっているのです。
多くの会社では、社内の品質管理標準でリスク管理表を作ることを義務付けているだけです。その後の予防策の実施状況や新しいリスクの発見といったモニタリング作業まで、きちんと定義している会社は少ないのです。まして、リスク管理表を作ることでさえ多大な労力や気苦労が要るものです。そんなリスク管理をプロジェクトの最後まで継続していくには、よほどリスクを重要視する文化や危機感がなければ実行できません。
リスクが取り除かれるまで、ずっとモニタリングしなければならないという継続性が、リスク管理のハードルをまた高くしています。緊急ではないけれど、重要な事項であるリスクを、プロジェクト期間中ずっと見続けるのがいかに根気と労力の要ることか、経験者には分かっていただけると思います。
重要だと認識しつつも、なぜリスク管理が現場でまじめに取り組まれなくなってしまうのかを、ずっと考えてきました。7つの理由を反面教師として見ていただければ、解決策は幾つか浮かんできます。
リスク管理ほどプロジェクトマネジャーやPMOが「リスク管理を完遂するんだ」という強い意思と、メンバーを説得するための根気、さらにトップマネジメントの強力なサポートが必要な作業はないのです。ただ、間違いなく言えるのは、リスク管理を徹底すれば、プロジェクトの成功確率は確実に高まるということです。