プロジェクトを失敗させないヒント68『事件は現場だけで起こっているのか』

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    『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

    『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

    本記事は、プロジェクトを成功させるために必要なノウハウを、数百の支援実績経験をもとに記述した『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』より、 1つずつヒントをご紹介していく企画です。プロジェクトマネジメントについて、何らかの気づきを得るきっかけになれば幸いです。

    当社はプロジェクトマネジメントの知識と経験を有し、皆様のプロジェクトが成功するお手伝いをさせていただいております。 プロジェクトマネジメントに関する疑問や課題がある方、成功への道筋をお探しの方、どうぞお気軽にご連絡ください。
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    システム開発では、組織間のコンフリクト(対立)がよく起こります。『[ヒント63]アプリとインフラの担当者は分かり合えないか』では、アプリ担当者とインフラ担当者の対立を取り上げましたが、もう1つ、やっかいな対立関係があります。現場と上位組織の対立です。

    プロジェクトで仕事をしていると、メンバーから必ずといっていいほど、「“上”は現場のことを何も分かっていない」と文句が出ます。ここでいう“上”とは、プロジェクトマネジャーより上の関係者、上位組織を指します。

    PMOは立場上、プロジェクト現場の状況を上位組織に伝え、上位組織での決定事項をプロジェクト現場に浸透させる役割を担っています。ここで、いくらPMOがコミュニケーションのハブとして頑張っても、プロジェクト現場と上位組織がお互いを理解し合えない限り、不満はなくなりません。

    上位組織は本当に何も分かっていないのか

    自分自身を振り返ってみても、プロジェクトのメンバーやチームリーダーとして仕事をしていた頃は、「“上”は何も分かっていない。本当に現場のことを理解しているのか」などと愚痴をこぼしていました。特に忙しい時に限って「報告用の資料を作れ」とか、「遅れの理由とリカバリープランを説明しろ」と言われたりします。「事件は会議室で起きているんじゃない。現場で起きているんだ」というドラマのセリフを思い出します。

    しかし、私がプロジェクトマネジャーやPMOをやるようになって実感したことがあります。それは「事件は会議室でも起きている」ということです。“上”の人と直接話す立場になってみないと、なかなか理解できないかもしれません。

    メンバーから上位組織が見えない理由

    プロジェクトのメンバーとしての視点から上位組織を見ると、上位組織はブラックボックス化していることが多いのではないでしょうか。つまり、プロジェクトの現場からどのような情報が報告され、どのようなことが話し合われ、その結果どのような指示が出てくるのか経緯が全く見えず、唐突に上からの指示だけが降ってくる、という印象を受ける人が多いと思います。そんな現場には2つの共通点があります。


    (1)上位者はプロジェクトの現場にほとんど顔を出さない
    (2)プロジェクト組織としての情報連携がうまくできていない


    (1)については、プロジェクト体制図に“上”の人の名前が載っているにもかかわらず、「メンバーは顔も見たことがない」、あるいは「飲み会にしか来ない」という状況を指します。現場のメンバーから見ると、そんな人たちが現場の状況を本当に理解して、正しい判断ができているのかと疑問に思うのは当然です。

    (2)については本来、上位組織との橋渡しをして情報を伝達すべきプロジェクトマネジャーやPMOが、その情報伝達機能を果たしていないケースです。公にできない事項(機密事項など)もありますが、それはほんの一部です。むしろ、「上位組織で話し合った内容を伝えなくても現場レベルでは困らない」「聞かれたら話すけれど、わざわざこちらからは話さない」というスタンスの人が、プロジェクトマネジャーやPMOを含め、上位組織のメンバーには案外多いのではないでしょうか。

    (1)と(2)の結果、現場に不信感が生まれ、現場から上位組織に正しい情報を上げなくなる可能性があります。なぜなら、現場を理解していない上位組織に情報を不用意に上げてしまうと、「的外れの余計な仕事が増える」と現場が思い込んでしまうためです。情報の重要度にかかわらず、上位組織に正しい情報を上げなくなる状況は、何としても避けなければなりません。

    上位組織の会議では、プロジェクトマネジャーやPMOからの情報を基に、要員調整や外部組織との交渉など、ハードな調整や決定が行われています。特に難しい局面にあるプロジェクトの上位組織では、“事件”の連続です。きっとプロジェクトメンバーの想像を超えていると思います。

    ただし、会議室での決定事項がプロジェクト全体に伝わり、プロジェクト全体が一丸となって同じ方向に進むためには、上位組織と現場がお互いに信頼し合い、お互いの顔や気持ちが見えていなければなりません。プロジェクトメンバーが上位組織の役員に直接会いに行くことはまずありませんし、経験上、現場から上位組織への不満がゼロになることもまずありません。

    プロジェクトマネジャーやPMOは、プロジェクトの重要なイベントには“上”の人に参加を依頼するなど、上位組織を巻き込んだプロジェクト運営を心がけます。もちろん、忙しい“上”の人の代弁者として、プロジェクトマネジャーやPMOがしっかりと上位組織の思いや考えをプロジェクト全体に伝えていくことも忘れてはなりません。