プロジェクトを失敗させないヒント70『プロジェクトでの正しい騒ぎ方』

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    『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

    『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』とは

    本記事は、プロジェクトを成功させるために必要なノウハウを、数百の支援実績経験をもとに記述した『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』より、 1つずつヒントをご紹介していく企画です。プロジェクトマネジメントについて、何らかの気づきを得るきっかけになれば幸いです。

    当社はプロジェクトマネジメントの知識と経験を有し、皆様のプロジェクトが成功するお手伝いをさせていただいております。 プロジェクトマネジメントに関する疑問や課題がある方、成功への道筋をお探しの方、どうぞお気軽にご連絡ください。
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    ※『プロジェクトを絶対に失敗させない!やり切るための100のヒント』をPDFまたは電子書籍でダウンロードできます

     


    『[ヒント27]プロマネに逆らっても「助けて」と叫べ』で、PMOはプロジェクトマネジャーの状況を見て、必要であれば上位組織に危険をエスカレーションすると書きました。しかし、現実問題として上位組織にエスカレーションしたとしても、やすやすとは動いてくれません。どうしたら上位組織が動いてくれるのでしょうか。

    PMOの役割の1つに、プロジェクト状況の見える化があります。見える化した結果、問題が見つかればプロジェクトマネジャーにエスカレーションします。通常は、見える化された状況を基に対応策を考え、プロジェクトマネジャーはそれを実施するための意思決定をします。

    ここで問題となってくるのは、プロジェクトマネジャーでは意思決定できない問題が発生した場合です。私の判断基準としては、プロジェクトの「前提条件」(プロジェクト関係者の中で確実に存在する、または、実施や順守されると仮定したこと)が崩れたかどうかを目安としています。

    なぜなら、プロジェクトはその前提に従って計画や予算が立てられ、その前提が崩れることを想定していないからです。想定外の出来事に対応する十分なリソースやコストが確保されていない可能性があり、その場合、プロジェクトマネジャーだけでは意思決定できなくなってしまいます。プロジェクトリスク費用としてコストを確保している場合もありますが、前提条件が変更になるような事態は、確保した以上のコストが発生すると考えた方がいいでしょう。

    様々なルートを使って上位組織に危険を伝える

    このような場合に必要になってくるのが、PMOとしての「騒ぎ方」です。当然、最初はプロジェクトマネジャーが自分の力で何とか問題を解決しようとするでしょう。しかし、それに費やす時間がプロジェクトにとって命取りになる場合も出てきます。そこでPMOは、プロジェクトマネジャー以外の誰がこの問題に対処できるのかを考え、スピード感をもって「プロジェクト内で対処できない問題が発生したこと」を適切な上位組織の担当者にエスカレーションしなければなりません。

    その際、PMOは多少大げさでも「危機感を持ってもらえる」ように騒ぐ方がよいと思います。ポイントとしては、上位組織の意思決定者に様々なところから「この問題は危険だ」という情報が伝わるように仕向けていくことです。そのために様々なルートや手段を使ってPMOが騒いでいく必要があります。裏を返せば、そこで騒ぐことができないPMOは、自らの職務を半ば放棄しているのです。

    1つ注意する点は、PMOがいくら危険だと騒いでも、上位組織との信頼関係がなければ、単なる「オオカミ少年」になることです。重要なのは、PMOとして上位組織と信頼関係を構築しておくことです。私が見てきた現場で、上位組織との信頼関係がうまくいっているところでは、図13のような良いサイクルを回すことができます。

    ポイントは、PMOがプロジェクト内のコミュニケーションのハブとなること。上位組織と現場のつなぎ役となることで、現場の状況を知るために「上位組織の担当者がPMOに状況を聞きに来る」という状態を作るのです。また、上位組織の方針や考えを現場にフィードバックし、「さらに現場から新しい情報を入手して上位組織に伝える」という役割を担います。そうすると、上位組織にとってPMOは情報収集源として欠かせない存在になってきます。

    このような場合、プロジェクトマネジャーを巻き込むのか、あえてプロジェクトマネジャーを通さずに情報を流していくのかは、慎重に選ぶべきです。プロジェクトマネジャーの置かれた立場や状況、その組織の文化によって選ぶべき方法は異なります。もし、プロジェクトマネジャーが「自分が知らないところで話が進むのは面白くない」と感じたり、保身に走ったりすれば、重要な情報がねじ曲げられ、現場を一層混乱させる可能性も出てきます。その意味から、「騒ぎ過ぎ」は控えた方がいい場合もあるでしょう。

    ヒント70 図ver1.0